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[#119] 何とも言えない 『ワヤじゃけえ』
『ワヤじゃけえ』
広島出身の友達が多い。
方言が移る。
その中でも飛び抜けた変な奴がいる。
スタイリストとしてかなり売れっ子の彼は私生活は愛しきアホなので、彼の話をしたい。
自分とは違いすぎていつも刺激を貰うし、カルチャーショックも貰う。
そんな彼の口癖が「ワヤじゃけえ」である。
広島弁なのだろうか。
全員にわかりやすく言うと「やばい」と同義語だと僕は理解している。
良い時も悪い時も美味しい時も不味い時もいつでも使える万能の言葉。
でも正直そんな口癖の彼が一番「ワヤ」なのだ。
スタイリストという仕事は車がないとダメらしい。
昔はボロボロの落書きだらけの原付にこれでもかと衣装(交通ルール的に大丈夫か?という量)を載せて表参道を走り回っていた。
そんな彼は今では高級車に乗っている。
彼が駐車場に行くと自分の車がない。
「ワヤじゃけえ」
その場にいないから断言はできないが、彼はこう口走ったに違いない。
断言する。
大慌てでマンションの管理人に連絡し、警察にも連絡をする。
そして遅れる旨を仕事先に伝える。
確かに「ワヤ」な状況なのだ。
情に厚い人が多い。
少なくとも僕が知る広島の人は全員情に厚い。
関西人の情はもっと恩着せがましいが、彼らはそうではない。
スマートな情の厚さだ。
これは断言できるがflumpoolの尼川と、この広島の彼が居なければ僕はもう東京には居ないかもしれない。
断言する。
そのくらい世話になったし、ただただ親友だ。
ただ彼には悪い癖がある。
大阪人の僕と尼川よりも話を盛るのだ。
僕も盛り癖はあるが、彼はすごい。
一を十にするくらいならともかく、一を百にするのだ。
その百に膨らんだエピソードはいっぱいあるのでまた違うコラムにも書くかもしれない。
警察の現場検証が始まる。
車のナンバーや車種など細かく聞かれパニクりながらも答える。
マンションの管理人も自分のマンションでこんなことが起きて申し訳ない表情だったらしい。
ここで彼の脳裏にとある景色が浮かぶ。
「ワヤじゃけえ」
それは悪い方の意味での「ワヤ」だ。
昨日彼は仕事終わりに急に渋谷に呼び出され飲みの席に参加したのだ。
もちろん飲んだからには運転して帰るわけにはいかない。
コインパーキングに停めたまま家にタクシーで帰っていたのだ。
そんなことをすっかり忘れていた彼の目の前では警察が現場検証をし。管理人は彼に謝っている。
ただただ彼本人の勘違いで大騒動になっているのだ。
そこから彼がどのようにその状況をかいくぐったのかは聞いていない。
心の中で「ワヤじゃけえ、ワヤじゃけえ」そう唱えながら冷や汗をかき警察と管理人に謝ったに違いない。
それを想像するだけで面白かったし、彼ならやりそうだと思った。
そんな馬鹿話をしては酔いが回る東京の夜。
彼の悪い癖。
一を百にする盛り癖。
それでも良いと思っている。
ほとんど嘘かもしれないけど、飲みの席で盛り上げようと話しているのかもしれない。
もしくは彼の持ち前の想像力で現実と想像が一緒になり話している可能性もある。
なんだっていい。
彼の話を聞いて大笑いして飲んでいる時間が好きなんだから。
だから車の話も警察も管理人も登場せずに、朝車がなくて焦ったけどよく考えたら昨日渋谷に停めたままだと思い出した。
くらいが実際のところなんじゃないかとも思っている。
でももしその話全てが本当の話だとすると。。。
それが一番ワヤじゃけえ。
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