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[#118] 何とも言えない 『金持ち』
『金持ち』
友達の実家が金持ち。
そんなのずるい。
自分が仕事で成功し金持ちになったのならわかる。
生まれながらに何の努力もせずに金持ちなんて、神様はなんて不公平なんだ。
仲の良いバンドマン。
バンドが解散し実家の家業を継いだ。
バンドは売れずだが実家からの仕送りで首が回らないなんてことはなかった。
これらに対して「いいなぁ」なんて言いながら、どこかで馬鹿にしていた。
というか馬鹿にでもしないと、このぶつけようのない感情を嫉妬だと認識してしまうのが怖かった。
そんな情けない嫉妬はしたくない。
今考えると彼らには僕のような庶民にはわからない苦悩もあったんだろうとも思う。
一応両親の名誉のためにも言っておくと別に僕の実家が貧乏だということではない。
でもじゃあ富豪かと問われると被せ気味で否定できる。
所謂ごく一般的な家庭だと思う。
それがコンプレックスでもあったが、一般的な家庭を築くことは簡単なことじゃないと大人になってから気づいたので両親には感謝しかない。
だとしても金持ちの親を持つ人の危機感や緊張感の無さは僕を軽くイラつかせる。
小学校五年生の時。
教室の物が色々と盗まれる事件があった。
クラスメイトの筆記用具や小物などが多かったように思う。
その事件の結末は覚えていないが、僕が盗まれたものは明確に覚えている。
あの頃、先が極細のボールペンが流行っていた。
その黒と赤が欲しくてオカンに文房具屋に連れていってもらった。
二本買う予定がそこには色とりどりの他の色のペンも並ぶ。
目を輝かせる僕にオカンが「六本までなら好きな色買っていいよ」と言ってくれ僕は青や緑や黄色と手に取った。
当時の僕としてはその極細のペンは普通のペンよりも少し高くオカンにねだるのも少し躊躇した。
それを盗まれたのだ。
六本すべて盗まれた。
まだ使っていない色もあったくらい買ってすぐのことだった。
僕は教室で一人泣きそうなのを必死に我慢した記憶がある。
そんな事件があったことを家でオカンにすぐに言えなかったが、担任からの連絡がすぐに家に入った。
金持ちの家に生まれたのなら僕はペン六本に対して泣きそうになるまで想えただろうか。
いや、それは金持ちでも貧乏でも悲しい出来事なのだろう。
でも僕は実家が金持ちの人がそこに甘えていると、この小学生の時の記憶が蘇る。
「また買ったるから!」
と言ってくれたオカンの顔も蘇る。
これ以上情けない嫉妬を垂れ流すのはもうやめよう。
僕はこう思うことにした。
実家が金持ちとは才能や遺伝なのだ。
と。
親が大きいから僕も高身長だし、親父がハゲているからその友達も最近ハゲてきている。
これと同じように金持ちも才能や遺伝なのだ。
どうしようもないことに嫉妬しても仕方がない。
誰にでも何かの才能があるなんて綺麗事は言いたくないが、誰にでも遺伝はある。
誰からも生まれず突然この世に存在した人なんていないのだから。
その遺伝というものは才能とニアイコールな気がする。
親に似たいところ、似たくないところ色々あるだろう。
だから容姿も、性格も、環境も全て持って生まれたものなのだからありがたく活用しよう。
それが良いものでも、悪いものでも。
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