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[#110] 何とも言えない 『君がいるだけで』
『君がいるだけで』
日々歌詞を書いている。
それなりにキャリアがある。
吃音だから言い換えをしなくてはならない。
しかしそれが作詞に活かされている。
そんな話は過去にもしたと思う。
ただ僕が行っている作詞はポエムではない。
言葉を紡ぐ能力とリズム感が必要だと思う。
メロディ、小節、口の開け方などなど。
色々と気にするポイントは多い。
童謡ではなく。
物心ついて始めて覚えたJ -POPの曲。
それが米米クラブの「君がいるだけで」という曲だ。
その理由は親戚の結婚式で僕と弟が歌わされたからだ。
誰の曲かもわからずに丸暗記させられた記憶がある。
でも幼心に何だか良い曲だなぁと思った記憶もある。
歌詞の「トゥルーハート」がどうしても言えずに「ツーハート」でも良いよと勘弁してもらった記憶もある。
もちろん意味なんて理解していない。
それ以外の日本語の歌詞ですら理解していないのだから。
歌詞は気持ちが良すぎても流れていく。
気持ちが悪すぎても聴くに堪えない。
良い違和感をいつも探している。
それが皆んなの耳を引っ掛けるフックになる。
とか。
色々言っていますが、これらテクニカルな話は時に邪魔にしかならない。
全てをひっくり返すような熱い想いや、意味がわからんけど耳について離れない。
そんな剛腕の歌詞の良さもある。
でもそれらも小節という枠の中に収められている。
もしくは数字上ではなく「節」の中に収められている。
大人になり歌詞を書くようになった僕は米米クラブの「君がいるだけで」を聴いた時にぶったまげた。
皆さん是非実際に歌うか、頭の中で「君がいるだけで」を流してみてください。
「たとえば君がいるだ」で一節目が終わっているように聴こえないだろうか。
そして続きの「けで心が」が二節目。
次の周に行ってみよう。
「なにより大切なも」で一節。
「のを気づかせ」が二節目。
正解なんてないがこれは大正解に聴こえた。
テクニカルな頭になっていた僕にビンタをしてくれたような感覚。
これは本当に良い違和感。
もし僕がこの曲に歌詞をお願いされたらという例を書いてみよう。
「たとえば君がいれば」とかを一節目。
「僕の心」とかを二節目とかにしてしまうと思う。
全然面白くないのだ。
あくまで例なので言葉だけを見ても歌詞として面白くないが、節をズラすという面白さがなくなり淡白になる。
カールスモーキー石井さんという歌うまモンスターが歌うことでブレスもなく綺麗に繋いでいることも悪い違和感になっていない要因だろう。
最近は歌詞を書く時は「君がいるだけで」を念頭に置く。
良い違和感の道標として。
この曲は終盤にも良い違和感を残して終わってくれる。
転調してからの最後のサビも聴いてほしい。
「いつでも いつの時も 二人はおた」で節が切れる。
「二人はおた」なのだ。
最高な違和感だ。
それに続くのは「がいを見つめてる」
そして「ラララ」で終わる。
「ラララ」は何の違和感もなく肌触りのいい毛布のように僕らを包み込む。
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