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[#105] 何とも言えない 『何か足りない正月』
『何か足りない正月』
毎年の速度がえらく早い。
こないだお年玉あげたやろ、と言いたくなるが本当に一年が早い。
仕方なく甥っ子姪っ子たちにお年玉を配る。
目も合わせずにポチ袋をかっさらっていく。
「ヒロキにお礼言うたか?」
それぞれの親が子供に無理矢理お礼を言わせる。
「ヒロキありがとー」
全く心がこもっていないお礼を浴びる。
ここまでが正月の伝統行事だ。
昔はここにじいちゃんとばあちゃんが居たが亡くなって椅子は余る。
でもそこに赤ちゃん用の椅子が加わりまた人数はある一定の数に収まる。
こうやって家族というものはサイクルを繰り返していくのだろう。
僕が亡くなる時まで田中家が穏やかに過ごせることを祈る。
いや亡くなった後もだ。
でも補ていない箇所もある。
小さい汚いクッションは誰も使わずに部屋の隅に置かれたまま。
当たり前のようになってきている。
当たり前のようになってしまっている。
なので甥っ子姪っ子たちにたまに聞くことがある。
「お前らワカメのこと覚えてる?」
彼らは少しムッとして言う。
「覚えてるわ!めちゃ可愛かったで!ほんでお前って言うたらあかんねんで!」
いつもお前という言葉使いを怒られる。
でも彼らの中にワカメがまだ生きていることを確認して安心する。
あぁワカメがいない初めての正月だ。
幸せに満ちている実家のリビングも何か足りないと思ってしまう自分がいる。
新年早々暗い話をしたいわけではない。
ワカメへの感謝に溢れたコラムだ。
溢れすぎて感傷的になっているだけだ。
親戚がいっぱい家に来て楽しそうだったワカメも、歳をとって親戚が来てもクッションから動かなくなったワカメも、その変化すら正月の一部だった。
それと同時に甥っ子姪っ子たちの成長の速度も正月の一部だ。
僕の顔を見るだけで泣いていたあいつも、背がグンと伸びたあいつも、ランドセルを買ってもらったあいつも。
彼らからすると東京からたまにやってくる金髪のロン毛の変わったおじさんなんやろうけど、僕は変わらずにいてあげたい。
ずっと頭おかしいヒロキであり続けたいと思う。
変わらない軸みたいなものがある方が、比較対象として存在する方が、それ以外の皆んなの変化に気付きやすい気がして。
しかもその対象が頭のおかしい奴なら一層彼らは自分に自信を持てることだろう。
お正月をどのように過ごしていますでしょうか?
忙しい人も、ゴロゴロしている人も、その隙間でこんなコラムを読んでくれたら幸い。
KITSUのコラムに出会ってくれ感謝しかございません。
洋服も今年はすごい数出していきます。
音楽と洋服と文字で吃音を知ってほしい。
今年もKITSUをよろしくお願い致します。
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