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[#98] 何とも言えない 『こたつとこうちゃん』
『こたつとこうちゃん』
居酒屋などで飲むよりも家で飲む方が楽だ。
しかも自分の家。
お金の心配、嫌いな人が来る心配、猫の心配、終電の心配、眠たくなる心配、空気読めないタイミングで帰りたくなる心配。
外で飲むとは心配事だらけなのだ。
コタツはオシャレじゃないと思いますか?
僕は思いません。
オシャレ且つ最強の暖房器具なのだ。
オシャレとは自分の心を満たす行為。
人にどう見られたいかもオシャレをする上で大事とは思うが、自分の家の中は誰もが見れるものではない。
存分に自分の心がときめく物で埋め尽くせばいい。
何の躊躇もなくこたつに足を入れる。
一応ダイニングには椅子が何脚かあり、友達が飲みに来ると夏はその椅子に座る人が多数。
しかし冬の家飲みになると一目散に僕が用意したこたつに入る。
気持ち悪いと思われるだろうが、これが僕は気持ちいい。
おもてなしができているという満足感と、何も言わずとも大人一人の行動を僕が誘導しコントロールできたような感覚なのだ。
フレデリックのベースこうちゃんが飲みに来た。
彼は僕の知り合いの中でも特に澄んだ心を持っている人。
そして僕よりも大人な考えを持つ人。
そんな彼はお酒が強いわけではないが、お酒が好きだ。
僕はそんな彼と飲むのが好きだ。
口の悪い僕を笑顔でたしなめてくれる。
そのまま僕も彼も緩やかに上品に酔っていく。
彼の酔った様は見せてあげたいくらい可愛い。
猫がいる我が家では床に座ると猫の毛がつく。
季節の変わり目なんて黒い服はえらいことになる。
それでも何も言わずこたつに入る人を愛しく思う。
こたつへの愛と猫への愛が伝わってくるからだ。
帰り際にはもちろんこちらから毛を取るために粘着テープのコロコロを手渡すが、向こうから先に「コロコロある?」と言われたらその人を少し嫌いになってしまうかもしれない。
こうちゃんは動物が好きでうちの猫もすぐに懐いた。
僕らはお酒のせいかこたつのせいか顔が赤い。
時間はゆったりと流れる。
何杯目かの芋焼酎のソーダ割りを作ろうとキッチンに向かい、こたつに帰ってきたらこうちゃんはこたつで寝ていた。
可愛い。
僕には弟がいるがきちんと飲んだことはない。
しかし恐らくこの感情は実の弟では生まれないのもかしれない。
氷の音を立てないように僕はしっぽりと芋焼酎を舐めた。
いくらゆったりとは言え、ある程度の時間が過ぎた。
全然迷惑でもないのだが、さすがに一応起こしてみた。
「こうちゃん、全然ええねんけど結構寝てるで?大丈夫?」
するとこうちゃんは目を開けずにこう言う。
「もうちょい!もうちょいだけ寝ていいすか?」
「うん、そりゃ僕は泊まってくれてもいいんやけど一応確認で起こしたんよ」
僕がそう言うとこうちゃんは。
「いや、泊まるのは申し訳ないす。ただあと少しだけ寝ていいすか?」
この間もこうちゃんはほぼ目を開けず酔っているのか眠いのか。
時間はまたゆったりと流れ、氷の音を立てないように僕はしっぽりと芋焼酎を舐めた。
「は!!!」
うちの猫もビクッと反応するその声を出したのはこうちゃん。
「俺どれくらい寝てました!?」
恐らく三時間以上は寝ていたはずだ。
猫はこうちゃんに擦り寄る。
「こうちゃんがあと少しだけ寝たいって言うからそこからは起こさへんようにしてたわ」
そう言うと顔にハテナマークが浮かび上がりそうな表情で僕を見るこうちゃん。
「一回起こしてくれたんすか?その時僕ヒロキさんと話したんすか?」
彼は覚えていなかったのだ。
謝る彼に僕は可愛い以外の感情はない。
うちのこたつで爆睡してくれるなんて、こたつ出してる冥利に尽きる。(こたつ出してる冥利なんて言葉はない)
彼は申し訳なさを纏いすぐに帰る支度を始めた。
「全然ゆっくりでいいし、泊まってくれてもいいよ?」
そんな僕の言葉を申し訳ないですという顔だけで制止した。
そんな日々をコロナが奪うが、こんなコラムを書いて懐かしみながらも、またこたつで皆んなと飲める日を思う。
こたつはじめました。
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