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[#91] 何とも言えない 『ライブハウスとBlue Note』
『ライブハウスとBlue Note』
ヤニ臭く、貼られたほとんどのポスターは破れている。
楽屋というには恥ずかしくなるほどくつろげない空間はやはりタバコの煙が充満している。
そこでリハ終わりのバンドマンがたこ焼きやカップラーメンも食べるもんだからその空間はカオスと言っていい。
でもその楽屋で馬鹿話を続けて爆笑してたんだから、居心地は良かったんだろう。
流石に背筋が伸びる。
音楽をやる人なら誰もがそのステージに立ちたいんじゃないだろうか。
Blue Noteでライブをやる。
それも二年連続。
大阪の汚いライブハウスに出まくっていた頃の僕にそれを教えてあげても信じないだろうし、まずお前誰やねんって言われると思う。
将来の自分がこんな金髪のロン毛になっているなんて思ってないだろう。
いや、それはあの頃から少しくらい自覚はあるかもしれない。
でもBlue Noteの件は絶対に信じない。
それくらい特別な場所だ。
ライブハウスのLEGO、Blue NoteのLEGO。
どっちが好きですか?なんて野暮なことは聞かない。
どっちも好きであれと思う。
というかどっちかしか出来ないという美学もあるだろうが、どっちも出来た方が良いに決まっている。
というかどっちも僕らだ。
でも比べたくなる気持ちはわかる。
だから自らこんなこと言ってんやろな。
どっちやねんと自分に突っ込む。
馬鹿みたいにデカい音を吐き出すスピーカーは物理的にも必要以上にデカい。
骨に響くその音がロックなんだと先輩が教えてくれたが、全く論理的ではなかった。
でも何となくわかる気もした。
モッシュ、ダイブというものもたまに起こる。
LEGOはそんな音楽じゃないが、僕らでもあの頃はたまに起こった。
演奏をミスってしまうほど、その景色にびっくりもしたが嬉しくもあった。
「ダイブ起こさせたぜ」
でもそれは身内ノリみたいなものだとあとでわかるのだが、その時の無敵感ったらなかった。
コロナの影響は絶対にある。
海外の有名ミュージシャンが日本に来れないためBlue Noteも困っていたんだろう。
それは恐らく確かなことだ。
僕らはBlue Noteのステージに立つ。
でもそれだけが理由なら二年連続僕らを呼んではくれないだろう。
僕らはBlue Noteのステージに立つ。
それは名誉なこと。
ライフスタイル、年齢、環境、見た目などなど。
あの頃から色んな景色が変わった。
それはLEGOの音楽だってそうだ。
迷ったり間違えたりしながらもそれすらも音楽にしてきた。
その過程でBlue Noteに辿り着いたのなら自分を誇りに思うし、それについてきてくれているお客さんのことも誇りに思う。
首元がヨレヨレのカットソー。
来たままの格好でステージに上がり来たままの格好で帰宅する。
ジーパンは破れ、安いコンバース。
そこには哲学があった。
その哲学を握りしめたまま、僕は綺麗なBlue Noteの楽屋でスーツに腕を通す。
シワのないシャツに、光る革靴。
どんな格好でもどんな場所でもLEGOの音はあのヤニ臭い場所からBlue Noteに続く。
これからも生きてく上で出会う人、もの、場所、音を消化して昇華して。
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