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    [#90] 何とも言えない 『ペットカメラ』

    KITSU

    2022/09/19 19:00

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    『ペットカメラ』


    こんな恐ろしいものがあるのか。

    ペットカメラというものをご存知だろうか?

    スマホで操作し見たい方向に動かせる。

    その映像はとても鮮明で夜でも暗視モードになる。

    写真や動画もそこから切り取ることができ、なんとスマホに話しかければペットに呼びかけることもできる。

    こんな恐ろしい兵器があるのか。

    そんなものをリビングに置けばいくら夫婦とはいえプライバシーもクソもない。

    あんなことやこんなことが出来なくなってしまう。

    何よりも「知らぬが仏」だと思っていた。

    愛する猫が一人の時に寂しそうにしている姿を見るのも辛い。

    愛する猫が一人の時にイタズラしていてもどうしようもない。

    知らぬが仏。

    なのでペットカメラを導入するつもりはない。


    風邪も引かない。

    インフルエンザも何年もかかっていない。

    しかしそのインフルエンザの時のしんどさは覚えている。

    「あの時のしんどさや」

    そう心で思った時に嫌な予感がした。

    「コロナや。。。」

    ツアーも始まる。

    高校や大学の合格発表の時と同じドキドキを感じながらPCR検査の結果を待った。

    きっちり陽性でLEGOのツアーを二本延期することになってしまった。

    ここから辛い隔離生活が始まるのか。


    聞いていた感じとは違う。

    初めの二日間はそれなりにしんどかったが、それ以外はピンピンしていた。

    トイレ以外は寝室から一歩も出ず、スマホのありがたみを思い知る。

    体も元気なのでNetflixやAmazon primeでお笑いを見ては爆笑し、映画を見ては感動した。

    それしかしていないのにしっかりお腹は空く。

    あぁサウナ行きたい、あぁラーメン二郎食べたい、あぁゴルフ行きたい。

    何より、あぁライブしたい。

    そんなことばかり考えていたがどれも叶わない。

    でも叶いそうで叶わない想いというのが一番タチが悪い。

    それは愛猫に会いたいという想い。

    ドアを一枚開ければ会えるのに、会えないという生殺しに近い絶望感があった。

    向こうの部屋から鳴き声が聞こえる。

    別に僕に会いたいから鳴いているわけではないと思うが、こんな時はそう思わせてほしい。

    隙を見て猫は僕のところに来ようとするが、奥さんに連れ戻されること多数。

    撫でてやりたいが、僕は今ウイルスに侵されているのだ。


    足が細くなっている。

    そりゃこんなに歩かないどころか立ってもいない生活を一週間以上過ごしているんだから当たり前か。

    NetflixもAmazon primeも見飽きた。

    いくら髭が生えない僕でもうっすらと鼻の下や顎にザラザラいた感触が出ていた。

    愛猫を触りたい。

    スマホのありがたみは動画だけではない。

    SNSでLEGOのお客さんからの温かい言葉に触れると時間を忘れることができた。

    それ以外にもまだスマホのありがたみはあった。

    あるアプリを起動させる。

    すると何日も足を踏み入れていない自分の家のリビングが画面に映る。

    数歩歩けば行けるそのリビングは果てしなく遠い場所にある部屋のように思えた。

    と思った瞬間にそこに愛猫が映り込んではどこかへ走っていった。


    今時のカメラはすごい。

    スマホ上で方角を操作できるし、録画できるし、暗闇でも見えるし、話しかけられるし。

    買わない予定だったペットカメラが我が家には装着されていて、そのカメラのおかげで愛猫の様子が見られた。

    あんなに反対していた僕もその恩恵を受けてしまった以上もう偉そうには言えない。

    コロナにかかり、一人寝室に監禁されている僕にとって画面越しだとしても愛猫の様子を見れるのは心が潤った。

    意味もなく話しかけると、猫は不思議そうにこちらに寄ってくる。

    その寄ってくる顔がカメラにアップになるもんだから心は潤いを通り越して水膨れしそうだ。


    あれから出先でも逐一カメラをチェックしてしまう。

    どうせ寝ているだけなのに。

    でもたまに画面越しに目が合う。

    そんな日は急いで帰ってしまうものです。

    どうせ帰る頃には寝ているだろうけど。




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