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[#89] 何とも言えない 『白T』
『白T』
真っ白のTシャツをこれまでもこれからも、僕らはいったい何枚買うのだろう。
KITSUでもいつか真っ白の無地のTシャツを作ってみたい。
質感とサイズ感だけこだわったもの。
なんだかんだ何枚あってもいいのだから。
どうせ買うなら寄付にあてられるKITSUのTシャツをお願いします。(宣伝)
なんで何枚も買うことになるかと言うと、人それぞれ理由は様々かもしれないし。
なんならそんなに買わないよという人もいるかもしれないが聞いてほしい。
白Tというのはすぐに汚れるのだ。
黄ばんできたり、食事の際にソースが飛んだり。
黄ばむのは仕方ないとして。
食事は気をつけてはいるが、これまでもこれからもやってしまうのだろう。
何かの仕事前。
ラジオか何かだった記憶がある。
夏のラジオ局は必要以上に寒い。
ラジオの際の面子は大体ボーカルのキンタさんと僕ってな具合に決まっている。
リズム隊の二人は吃音の僕よりも口下手だった。
ラジオ前に腹ごしらえだと和食屋さんに入った。
あー小皿に醤油を入れる時にもっと気をつけておけば。。。
たまに「これはオシャレなんだろうか?」と思う服がある。
それは子供の落書きのようなアートがすごい高値で取引されているような感覚に陥る。
でもそれも全て僕に知識も感受性もなく、そのオシャレやアートを理解できていないだけで見る人が見れば何にも代え難い価値があるのだろう。
食事の際僕は一番やってはいけない白いTシャツに醤油を一滴落とすという愚行をした。
その場にいるメンバースタッフには笑われたが、内心お気に入りのTシャツだったので悲しんでいた。
でもそれよりもこの後のラジオの仕事はどうしたものか。
いくらラジオでも最後にSNS用の写真は撮るだろうし、何より恥ずかしい。
適当なTシャツを買いに行けばよかったのかもしれないが僕は冷静さを失っていた。
しかし自分が冷静だと思い込んでいた(思い込みたかった)僕はある賭けに出た。
「もっと醤油持ってこい」
アーティストの端くれといて過ごしているのだ。
この場でこの白いTシャツを黒いペンキ(醤油)でペイントTシャツに変えてみせよう。
行儀が悪くて申し訳ないが、小皿に醤油をたっぷりと入れ、それに指を突っ込む。
指先についた醤油を自分のTシャツにパッパとふりかけた。
それはまるでトイレで手を洗った後水滴を払う行為そのものだ。
白いTシャツは無規則な黒いドット柄のTシャツへと姿を変えた。
これはこれでアートなんじゃなかろうか。
鏡を見て確認する。
ただTシャツとしては、ファッションとしてはかなりダサかった。
そんな服が店にあっても本来の僕なら買わないと思う。
でも醤油をこぼしたというダサさよりはマシに思えたのだ。
ラジオの本番を無事に終えた。
DJさんとは過去に何度かお会いしたこともあったので会話も弾む。
収録を終えマイクは切られた。
所謂オフレコ状態の中DJさんが僕に言った。
「そのTシャツって何かのシミですか?」
名探偵が現れた。
白状しようかどうしようか悩む僕は「え?なんでですか?」という答えになっていない返事をした。
「いや、デザインなら失礼かなと思って本番では言わなかったんですが気になって」
名探偵な上に僕が恥をかかないように本番では黙っていてくれたなんてマリア様もびっくりな優しさだ。
「実は。。。」
僕は全て白状した。
脳内BGMはコナンで犯人が自白する時に流れる哀愁漂うあれだ。
「それにしても何でシミだとわかったんですか?」
僕がそう言うとDJさんはこう言った。
「なんかデザインにしては茶色かったんですよね」
何だって!!??
自分の服を見てみる。
あんなに黒かった僕のアート(シミ)は変色し茶色になっていた。
貰うべき醤油はたまり醤油だったか!!!!
(そうじゃない)
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