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    [#297] 何とも言えない『バグった!?』

    KITSU

    2026/09/21 19:00

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    『バグった!?』

     

    趣味が何個かある。

    多いのか少ないのかわからんが何個かある。

    趣味とはお金や時間がかかる。

    娘が産まれても今まで通り好きに生きたいがそうもいかない。

    お金に余裕があるわけではないが、お金よりもないのが時間だ。

    趣味とは時間を取られるのだ。

     

    ボクシング、ゴルフ、サウナ、飲みなど。

    自分が普段していることってこれくらいだ。

    こう羅列するとなんかラインナップが寂しいというか、おっさんがすぎるというか。

    まあいい。

    この中で娘が産まれて減った趣味がある。

    サウナと飲みだ。

    ボクシングはトレーニングになるし、ゴルフは頻度が高いわけではない。

    何より僕はスポーツが好きだ。

    取捨選択するならサウナと飲みを減らす決断に至った。

     

    まず飲みは行ってる時間もないし、誘われなくなった。

    子供ができて気を使われているのか自分からも誘わなくなった。

    家で缶ビールを開けるか、地元の飲み屋でさくっと飲んで終わり。

    娘ちゃんがいると親が一番忙しい時間が保育園から帰ってきてから寝るまでの時間だ。

    それはつまり今まで飲みに行っていた時間とピッタリと重なる。

    そりゃ飲みになんていけない。

     

    サウナも行くことが減った。

    昔は週2くらいで行っていた近所のボロい銭湯。

    娘の二歳の誕生日が過ぎたある日ひさびさに行ってみようと思った。

    つまり二年ぶりだ。

    「あの銭湯でよく会ってたおっちゃんおるかなぁ」

    なんて思いながらバスタオルを持って歩く。

    近所のサウナは以前にもコラムで書いたと思うが、おじいさんとか刺青のおっちゃんが多数。

    そこにひさびさに金髪のロン毛がお邪魔することになる。

    サウナ室も懐かしい。

    四人入ればいっぱいの部屋の温度は高め。

    今日はサウナ室には僕ひとり。

    粒のような汗が体を覆う。

    ずっと下を向き自分の汗が滴り落ちるのをただ眺める。

    一瞬部屋の温度が下がる。

    扉が開いたのだ。

    サウナ好きな者は扉の開け閉めを素早く行う。

    サウナ室の温度に気をつかうからだ。

    しかしなかなか扉が閉まらない。

     

    「チッ」

    そう大きめの舌打ちをして扉を開けっぱなしにしている馬鹿の顔を拝むと、あの銭湯でよく会ってたおっちゃんだった。

    「お前かよ」

    と心でツッコむ。

    おっちゃんは僕には気づかず鼻歌まじりに横に腰をかけた。

    「おっちゃん僕のこと覚えてます?」

    本来サウナ室では会話禁止だが僕ら以外いないし小声ならいいだろう。

    顔を覆っていたタオルをのけて顔を向ける。

    「なんだよー!にいちゃん久しぶりじゃーん!最近何してたのよー!」

    私語厳禁のサウナ室ででっかい声で豪快に笑う。

    昔僕に「アーユーフィリピンボーイ?」といきなり声をかけてきただけはあるモラルの無さだ。

    「おっちゃん、僕子供産まれてサウナ来られへんかってん」

    「可愛いだろ~俺なんて子供9人もいるからわかるよ~」

    このおっちゃんの言っていることはいつも本当か嘘かわからない。

    「お兄ちゃんまだバンドで飯食ってんのか?」

    「おっちゃんよう覚えてんなぁ。そうやで」

    「そうか!じゃあバグった!?」

    「ん?どういうこと?」

    「だからバグってないのかって聞いてんだよ!」

    薬とか葉っぱをやってるのか?と聞いているのだろうか。

    よくわからんから話を合わせておく。

    「そらバンドマンなんてみんな頭バグってるみたいなもんやで」

    「ガハハハ!そうかそうか!!!」

     

    ひさびさのサウナでいわゆる”整った”僕は帰り道のコンビニでグリーンダカラをガブ飲みした。

    空は東京とは思えない広さで地元の羽曳野の空のようだった。

    また頻繁にサウナに通えるわけではないのであのおっちゃんと次会えるのはいつになるやら。

    ロッカーに入れっぱなしだったスマホを開いても特に急用の連絡はない。

    なんとなくSNSを開いてみる。

    その瞬間、点が線になった。

    もしかして。

    あのおっちゃんは”バズった!?”と言いたかったんじゃないだろうか。

    お前の音楽はバズったか!?と。

    バズったという最近覚えたであろう言葉を言いたくてバグったと言い間違えていたのか!?!?!?

    マジかよ、おっちゃん。

    マジごめん、おっちゃん。

    関西人としてそのボケにきちんとツッコんであげれなかった。

    それが天然のボケだとしても。

     

     

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