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    [#281] 何とも言えない『忘れらんねえよの物差し』

    KITSU

    2026/06/01 19:00

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    『忘れらんねえよの物差し』

     

    彼ら(今では一人だが)がいなければ、出会わなかった人が沢山いる。

    知らない人のために説明しておくと、僕は彼ら(今では一人だが)、忘れらんねえよというバンドのサポートギターを三年ほど努めさせていただいていた。

    人生で初めてLEGO以外でギターを弾くという行為。

    それはそれは緊張と不安と興奮が混ざって”何とも言えない”気持ちだった。

    彼ら(今では一人だが)はLEGOよりも衝動的なライブをする。

    そこから振り落とされないように必死でしがみついて演奏していた。

     

    そもそも何で僕にお願いがあったかというと、その当時同じくサポートドラムをしていた元ビートクルセイダーズのマシータさんが「LEGOのヒロキとかいいんじゃない?」と言ってくれたことがきっかけらしい。(後から聞いた)

    なんてことない思いつきで言ってくれたかもしれないその一言は僕の人生を大きく変えた。

    全国各地を旅した。

    LEGOでは行ったことのない都道府県も行かせてもらった。

    たぶん佐賀県とか沖縄県とか。

    LEGOでは対バンしないようなバンドと仲良くなれた。

    打首とか四星球とか。

    LEGOでは出会えないようなスタッフさんや人と仲良くなれた。

    もうサポートしていないのに今でも飲み会や新年会に誘ってくれる。

     

    「今日のライブヤバかったね!!!」(いい意味で)

    終演後、メンバーやマシータさんが讃え合っている。

    そんな空気を壊したくないから笑顔で応える。

    「今日のライブヤバかったね………」(悪い意味で)

    終演後、メンバーやマシータさんと反省会が行われる。

    そんな空気を壊したくないから神妙な顔で応える。

    僕は思った。

    “ライブの良い悪いの定義が違う!!!!!!”

    これはなかなかのカルチャーショック。

    僕が良いライブだと思ったライブも忘れらんねえよにおいては悪いライブ、その逆もまた然り。

    LEGOで培われたライブというものを物差しが崩壊した。

    崩壊というか、別の物差しを用意しなければならないとわかった。

    だんだんと彼らの“良い”を理解していく。

    何がカッコよくて、何がダサいのか。

    それはバンドにとって一番大切なものなのかもしれないし、それを新たにまた一つ知れたことは僕にとって財産なのだ。

    そこからの僕は新しい物差しを丁寧に合わせて毎回のライブに挑むギタリストになった。

    そしてだんだんとライブ後に同じような良い笑顔で乾杯ができたり、同じようにうつむいて建設的な反省会ができた。

    しかしその物差しをLEGOに持ち帰ることはない。

    LEGOには確固たる物差しがあるから。

    これもまた財産なのだ。

     

    初めて言うことだが。

    彼ら(今では一人だが)からベースの梅津くんが脱退する時に言った言葉がある。

    「柴田さん、よかったら僕ギターで入りましょうか?」

    少し衝動的にこんなことを言った。

    全然僕なんかが務まるわけないし、忘れらんねえよのメンバーとして似合っていないこともわかっている。

    でもそのギャップも面白いかな?とか考えた。

    何より、このまま彼を一人にすると忘れらんねえよがなくなってしまうんじゃないかと、小さい(気のせい?)彼の背中を見て思ったのだ。

    何日かして柴田さんから「俺一人で頑張ってみるよ」と返答があった。

    僕はあっさりフラれたことになるのだが、冷静に考えるとそれでよかったと思う。

    でも今でも僕からのその提案を彼はたいへん恩義に感じてくれている。

     

    そんな彼ら(今では一人だが)と明日ガチンコの2マンライブがある。

    明日だ。

    両方の物差しを持って新代田へ向かう。

    ライブの出来の答えはあなたの物差しで決めてくれればいい。

     

     

     

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