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    [#280] 何とも言えない『大ちゃんの娘来てるってよ』

    KITSU

    2026/05/25 19:00

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    『大ちゃんの娘来てるってよ』

     

    本編が終わり、アンコールの手拍子が聴こえる。

    ありがたい。

    アンコールを当たり前だなんて思ったことはない。

    でもアンコールに曲を用意していることも事実。

    この矛盾は各アーティストはどのように消化しているのか。

    衣装を脱いで、グッズのTシャツに着替えようというその時社長が言った。

    「今日のライブ〇〇ちゃん来てるって!!」

    自分の心臓の居場所がわかるくらいドクンと体内を血が走った。

    〇〇ちゃんとは元ドラムの娘の名前。

    僕は彼女の誕生が嬉しく、「カーラ」という歌詞を書いたくらいだ。

    そんな僕にも娘が産まれたタイミングでのサプライズ。

    「え?ゲストで社長が入れたの?」

    「違うよ!自分でチケット買ってサプライズで来てくれたみたい!!」

    これでもかと、また心臓の居場所がわかるドクン。

     

    アンコールは二曲。

    大きいライブハウスでもないのに演奏中は彼女を見つけられなかった。

    会場のお客さんに紛れているのか、成長して顔も変わっているのか。

    特別な想いで演奏をしたことは間違いない。

     

    アンコールも終えた楽屋に彼女が来てくれた。

    18歳になった彼女はもう大人で、僕がオムツを替えていたのが信じられないくらい立派な女性だ。

    でも笑うとあの頃の顔に戻る。

    機材を片付けるのを忘れるほど話が尽きない。

    というか僕というおじさんからの話や質問が止まらない。

    それらすべてに懐かしい笑顔で答えてくれる彼女。

    でもそろそろステージや楽屋を片付けないといけない。

    なので冗談まじりにダメもとで言ってみた。

    「打ち上げ行くやろ?」

    めんどくさいおじさんが若い子を誘って苦笑いされて断られるに違いない!

    という空気が漂い、冷たい視線が僕に注がれた。

    すると。

    「え、いいの?行きたい」

    彼女はそう言ってくれたのだ。

    「おーーーーーまじか!行こ行こ!美味い店予約してるで!ちょっと待っといてな!」

    おじさん大歓喜。

    というか楽屋の皆んなも大歓喜。

     

    でもよく考えるとさすがに18歳の女子を夜の福岡の街に連れ出すには親の許可が必要か。

    大ちゃんに聞いてみよう。

    実に七年ぶりくらいに彼にLINEすることになる。

     

    打ち上げ会場は人気のもつ鍋屋さん。

    空白の時間を埋めるというと大袈裟だが、あの頃から現在の話で時間が過ぎる。

    誰かが言った。

    「LEGOの好きな曲なに?」

    彼女は答える。

    「HOW TOが好き。歌詞が良い」

    おじさん(私)大歓喜。

    でもおじさん(私)が言う。

    「HOW TOってパパがドラム叩いてない曲やん!」

    「確かに!!」

    そんな会話で盛り上がる。

    「でもあの曲も好き。ヒロキが事故っちゃった時の曲」

    「Wait?ね!あれはちゃんとパパがドラム叩いてる曲やな!」

    とか言いながら心の中で本当は”ヒロキ”って呼んでくれたことにおじさん大大大大歓喜。

     

    彼女は行儀が良く、奥さんに似ているなーと思った。

    彼女はたくさん食べて、大ちゃんに似てるなーと思った。

    にっこり笑ってさよならをした顔はどちらにも似ていた。

    なんという歳月だ。

    そりゃLEGOも20周年に突入するわけやわ。

     

     

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