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[#48] 何とも言えない 『売り切れ』
『売り切れ』
欲しかったものが売り切れていた。
どうして早く買わなかったんだ。
自分を責めることはよくある。
それと同時に。
売り切れるほど人気があったということは自分が売れ筋に飛びつく平凡な感性、平凡な趣味、平凡な好みである。
そう断言されている気がして、また自分を責める。
別に人と同じでもいい。
平凡が悪いわけじゃない。
そう言い聞かせる自分。
その一方で。
お前はロックミュージシャンで作詞家。
人と同じような感性でどうする。
そんな自分がいる。
テレビゲームが好きではなかった。
ずっと外で遊んでいたかった。
サッカー、かくれんぼ、キャッチボール、夕焼けの中飲む炭酸が好きだった。
しかしクラスではゲームボーイのポケモンが流行り「赤」と「緑」がどうこうという話で持ちきりだった。
何を言ってるかもわからず、しかしゲームボーイは家にあったため思い切ってお小遣いでポケモンを買ってみた。
どっちの色を買ったかも覚えていない。
スタートボタンを押し始まった僕のポケットモンスター。
しかし普段ゲームを全くしないはモンスターボールをどこで手に入れるのかもわからず辺りをウロウロするのみ。
これのどこが面白いのかと、とうとうモンスターを一匹もゲットできないままポケモンを売った。
箱や説明書も一瞬で捨てる性格なので売値は買値の半分以下だった。
「ポケモンゲットだぜ」
も言わせてもらえないまま。
結局僕は「皆んな持ってるから」という呪縛に抗えず。
それでいて、そこから何も手に出来なかった。
そんな記憶がずっと心に棲み付いたまま大人になってしまったのだろう。
偉そうに売り切れに狼狽える自分に失望してどうする。
「皆んなと同じ」がいいと言ってるくらいが人間らしくていいじゃないか。
いや。
そうじゃない。
皆んな「自分は特別」だと思っていやしないか?
自分は人と違う。
だからこそ特別なものを欲しがって、結局その特別は皆んなと同じものになる。
僕は誰かの特別になれているかもしれない。
しかし皆んなの特別にはなれていないのだ。
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