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[#40] 何とも言えない 『知ってくれたんかな?』
『知ってくれたんかな?』
以前書いたことがあると思う。
受付や役所が苦手だと。
それは吃音のせいだ。
受付や役所は適当な偽名を使っても大丈夫そうな場面ではない。
「田中」が言えないなんてどんな田中や。
LEGOでホテルにチャックインする。
だいたい十五時からチェックインできるホテルが多い。
今日のホテルはサウナがあるらしく一刻も早く部屋に入りたい。
いや、サウナに入りたい。
まとめて予約しているので代表者がチャックインすれば全員分の部屋の鍵は貰える。
というホテルばかりではない。
そんな時は基本的に関わらないように後ろの方にいるのだが、今回は違う。
全員一人ずつ名乗らないといけないらしい。
憂鬱な気持ちになる。
あぁ今日もまた受付で吃るのか。
KITSUの活動を始めるにあたってメンバーには特に話もせずにスタートした。
理由としてはわざわざ改まって言うほどのことではなく、コラムはブログの延長戦みたいなものだし、洋服もLEGOのグッズと差別化したかったからだ。
それでもスタートした後、メンバーと会ったら何かしらの反応はあった。
メンバーの二人とも「確かにそんな話し方の時あるなぁ」みたいな反応で流石やなと思った。
なぜなら大抵の人は「話してても吃音だと思ったことなかった」という反応だったからだ。
その他の人と比べて、この二人とは一緒に過ごした年月は果てしないものなんだと再確認した。
そうこうしていると同じ練習スタジオを使うヒトリエの皆んなも偶然やって来た。
彼らも練習なのだろう。
ドラムのゆーまおが言った。
「ヒロキさん!吃音症やったんですね!」
やはり普通はこういう反応なのだ。
続けて彼が言った。
「僕の友達に吃音症の奴が居て、今度紹介しますよ!」
KITSUを始めてよかったなと思った。
シンタローが受付を終え、キンタの番だ。
僕はいつも最後尾にいる。
名乗らずに「そのグループで残りの奴が僕です」と受付を済ませよう作戦だ。
それでもダメな時用に免許証も用意しておく。
本当に面倒だ。
でも受付で名前を言えず、吃り、焦り、冷や汗をかくくらいなら、その面倒は目を瞑れるのである。
「僕がカナタで、後ろの彼がタナカです」
急にそんな言葉が耳に飛び込んできた。
ん?
何が起きてる?
キンタさんが受付をしている。
それはわかる。
僕は自分の受付の時のシュミレーションで頭がいっぱいだった。
しかし彼は僕の名前も言って、一緒にチェックインをしてくれている。
「はい、カナタタケヒロと後ろがタナカヒロキです」
やはり僕の名前も言ってくれている。
今まではそんなことはなかった。
KITSUで僕の吃音のことを知ってくれたのかな?
こんな身近なところで変化が起きている。
ありがとうと僕はキンタから鍵を受け取る。
KITSUを始めてよかったなと思った。
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