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[#241] 何とも言えない 『夏の忘れ物』
『夏の忘れ物』
海なんて何年入っていないだろうか。
プールもBBQも花火も。
それらもしていないし、今のところする予定もない。
夏らしいことと言えば娘を連れて盆踊りに行ったくらいだろうか。
昔ならそれらをしていない夏にどこか虚しさがあったかもしれない。
それが今ではこの夏よ早く過ぎ去ってくれと願うばかりの暑さなのだ。
”短い夏が終わったのに 今 子供の頃のさびしさが無い”
フジファブリックが歌っていた。
そうなんだ。
寝癖のままで向かうラジオ体操の生ぬるい気温。
扇風機の前でする宿題の藁半紙の感触。
甲子園で活躍する野球の上手いお兄さんたち。
友達と約束した市民プールに向かう時に自転車のカゴから香るビニールカバンの匂い。
風呂のたびに沁みる日あけと朝起きたら布団に散らばるめくれた日焼けの皮。
あの頃は特別ではなかったどこかに置いてきたこれらにはもう会えないのかと思うとひどく寂しさを覚える。
バンドマンとして生きてきた。
最近は人間として生きている気がする。
勘違いしないでほしいが、バンドマンとしての誇りが減ったわけでも無くなったわけでもない。
20周年に向けて再燃しているくらいだ。
ただバンドマンとしての”誇り”ではなく”無鉄砲さ”みたいなものが夏の汗とともに流れていっている気がする。
まったく聖人君子ではなかった。
若い時の自分を悔い改めたり、親になって一層背筋が伸びたり。
いかに自分が人間として出来ていないか、いかに自分がバンドマンという立場に甘やかされていたか。
それを再確認していることが多い。
でもそんな僕も”バンドマンとして”夏に忘れ物をしている。
ずっと。
腕につけるバックステージパス。
これを腕に巻いていなければ楽屋エリアに入れず不審者扱いされてしまう。
フェスが終わり家に入って思い出すのだ。
そのパスをつけたままだということに。
それをまあまあの力で引きちぎる。
するとそこにはその日バンドマンとして在ることができた証の日焼けの跡が。
腕時計の日焼け跡のような。
昨日は渋谷でライブ。
爽やかな風はない。
昼から各地でイベントは行われ女の子のアイドルがお客さんと写真を撮っている。
それを横目に滝のような汗を流しながら機材を搬入する僕らはバンドマンだ。
そして本番ではまた対バンのアイビーと熱すぎるライブをし滝のような汗を流す。
また機材をケースにしまい滝のような汗を流し搬出する。
湿気と酒の匂いが混ざった風は気持ちよくはないが楽しいライブ後なのでバランスは取れていた。
会場に戻り、今日出た汗よりは少ないであろう酒を交わしアイビーと語らう。
最近はフェスという名の屋内のイベントも増えてきたのでフェスとは何かを一概には言えない。
今年は野外フェスで言うとAdam FESとムロフェスとカンラバというフェスがある。
カンラバは来月なのでわからないが、Adam FESとムロフェスではその証のような日焼けができなかった。(Adam FESは服に貼るタイプのパスだったこともあり)
証を増やしていきたい。
このバンドマンとしての夏の忘れ物は来年の夏に取り戻しにいこう。
まだ忘れ物をしている。
お盆が終わったというのにまだお墓参りに行けていない。
大阪に帰っていないからそりゃ行けない。
でもこれを書いていて思った。
そういうことを忘れ物だと思うようになったことは忘れていくだけじゃなく、何かを覚えていっているとも言えるのかもしれないと。
皆さん夏らしいことしました?
フェス行った?
お墓参り行った?
ずっと家やった?
してもしてなくても異常な暑さの夏のせいにすればいいよ。
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