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[#240] 何とも言えない 『お盆と荷物スペース付き座席』
『お盆と荷物スペース付き座席』
先日名古屋でライブがあった。
お盆真っ只中。
いつもなら車で行くのだがお盆の渋滞を恐れて新幹線を選んだ。
最近キャリーケースを新調したこともあってタイヤの転がりがスムーズ。
駅までの道のりが少し楽に感じた。
でもやはりお盆。
新幹線のホームは人で溢れギターを背負っていることが申し訳なくなる。
急いで炙り鯖鮨を買った。
UP SETというライブハウスの20周年のアニバーサリーライブ。
僕らのバンドにとってはホームと呼べるライブハウス。
対バンはトリコ。
関西の2バンドが名古屋のアニバーサリーを祝う。
対バンは久しぶりなので個人的に楽しみにしていた。
セットリストは彼女たちを意識しつつも、お祝いと次のツアーに繋がるようにという思いを背負わせて。
新幹線はギターや機材もあるので荷物スペース付きの座席を予約する。
途中で横の席にお母さんと3歳くらいの女の子がやってきた。
畳んだベビーカーを持って。
彼女たちも荷物スペース付きの座席を予約しているのだ。
しかし僕の機材が邪魔で荷物を入れにくそうで申し訳ない。
そう思うと同時に、僕は気づいたらひょいとベビーカーを担いてスペースに入れてあげていた。
「ありがとうございます」
なんて言われても自分にも娘が産まれたことをいいことにお礼を言われるなんて心から思っていなかった。
そんな自分にもびっくりした。
昔なら手伝うかどうするかモジモジしていたに違いない。
名古屋までの道のりで女の子は僕の横で塗り絵をしていた。
とても上手に。
それと同じくらい新幹線の座席の前から簡易的な机が現れることを楽しんでいたのも素敵だった。
『気配』という曲を演った。
けっこう久しぶりに演奏した気がする。
歌詞の説明をするのも野暮だが、この曲はもう会えない人のことを歌っている。
誰にでもそんなもう会えないけど会いたい人がいると思う。
ある程度の年を重ねるとその人数も増えてくることが悲しい。(ペットも会いたいですよね)
お盆とはそんな大切な人が帰ってくるという。
わざわざライブで言うことではないから言わんかったけど、お盆にこの曲を演っている状況は個人的に胸にくるものがあった。
いつもどの曲でも”届け!”と大きい音鳴らしているが先日は横で聴いてくれているような安心感があっていい演奏ができたと思う。
帰りの新幹線ももちろん荷物スペース付きの座席を予約している。
疲れ果てた体を早くシートに沈めたい。
普段ならここから東京まで運転があるが今日は新幹線。
急いで冷えた缶ビールを買って乗り込む。
僕が予約していた荷物スペース付きの座席にはすでにでっかいキャリーケースが置かれていた。
ちなみに2列シートで横には誰もいない。
じゃあこれは誰のキャリーケースだ?
なんとか隙間にギターと機材を入れることができたがモヤモヤが残る。
外国人観光客も多いし、日本人だとしてもこのスペースが予約が必要なことも知らないのかもしれない。
実際荷物は置けたからいいじゃないか。
そう自分に言い聞かせてこのモヤモヤを振り払おうとする。
でも本当はこの予約していないのに置かれたキャリーケースをどこかの駅にぶん投げることがモヤモヤを晴れさせる最善の方法だとわかっている。
大人なのでそんなことはしないが。
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