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[#25] 何とも言えない 『紐が出ている』
『紐が出ている』
パーカーには紐がある。
その紐はどのように使えばいいのだろうか。
これからあの紐を使う事はあるのだろうか。
表参道ヒルズの裏道は落ち着いている。
そこですれ違った男性は遠目から見てもオシャレという真剣を振りかざしながらこちらに歩いてくる。
高そうな服や靴と肉体で彼は形成されていた。
そんな男性の服やパンツの至る所から紐が出ている。
それらは風が吹けば揺れ、歩いているとたなびく。
プレスリーの脇から手首にあけて紐が並んだ服を思い出した。
が、実際はそれよりももっと不規則に紐は出ている。
僕のバンドのベースのシンタローの服からもよく紐が出ている。
いつかの楽屋で紐がついた衣装に着替える彼の紐を引っ張ってみたことがある。
「ん?」
と言われて終わったし、僕も目的を見出せないまま行動に移ってしまっていた。
パーカーの紐とその紐は繋がっていて、シンタローの服の紐を引っ張れば、僕のパーカーの紐が引っ張られる。
時空を超えてこっちの端とあっちの端は繋がっていたのだ。
みたいな馬鹿げた話をメンバーにしようとは思わなかったが、瞬時に僕の空想は開いて閉じた。
その楽しそうな空想は結ぶことなく溶けるように脳から消滅した。
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