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    [#218] 何とも言えない 『Flowers』

    KITSU

    2025/03/10 19:00

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    『Flowers』

     

    シングル曲なのにあんまりライブでやらない曲がある。

    アルバム曲で滅多にやらない曲があるのは理解できるが。

    その曲の質量はズシンと重く、演奏者にもお客さんにも覆いかぶさる。

    そして長い。

    七分以上ある。

    演ってる方も聴いてる方も疲れる。

    でもそれは嫌な疲れではない。

    ちなみにシングルなのにベストアルバムにも入れていない。

    この曲には意味がありすぎてフラッとセットリストに入れることはできないのだ。

     

    3月11日。

    これは日本人にとって忘れられない日にちだが、まだ0歳の僕の娘が大きくなった時には昔そんな大変なことがあったんだなくらいの日にちになってしまうのかもしれない。

    あの頃書く全ての歌詞にはやはり震災で傷ついた日本の空気感がはらんでしまって思うように歌詞が書けなかった。

    「もうそれなら僕はこの震災のことを”真正面”から歌詞にしよう」

    そう思った。

    全ての歌詞に少しずつその影が見えてしまうなら逃げずに一曲に描き切ってしまおうと。

     

     

     

    Flowers 

     

     

    雨は夜通し降り続いて

    朝にあがって街は光った

    昨日を洗って濡れたままの今日

    すべては綺麗だった

     

    今日も咲けない花が涙流すこともできず、ただ萎れる

     

    今朝の報道に胸が痛んだ

    そんな午後は晴れてしまったんだ

    あれはいつだっけな?

    世界に矛盾があると気付いてしまったのは…

     

    今日も咲けない花が涙流すこともできず、ただ萎れる

    咲き誇る花でさえもいつかは虚しく枯れる不公平に何を歌えば?

     

    鳥は空を飛んで、魚は海を泳いで

    向こうでは地が揺れ波が起ち、向こうでは日常

    矛盾して美しいこの僕らの世界を嘆くことなく、憂うことなく

    生きるしか無いから

    生け、生け、生け

     

    今日も咲けない僕は涙流すように声の限り叫ぶ

    咲き誇る君にいつかは名前の無いこの感情が届くことを願い

    夜を越え、明日へ

     

     

     

    これがあの頃の僕にとっての真正面。

    花は全部咲いてから枯れるものだと思っていた。

    避けない花もあると知った時の絶望感ったらない。

    KANさんが歌っていた”必ず最後に愛は勝つ”は本当にその通りだと思うけど、そうじゃない時もある。

    悪いことをすればいつかバチが当たって、良いことをすれば幸せが訪れる。

    じゃああの時震災で命を落とした人は全員悪いことをしていたのか?

    そんなわけない。

    阪神大震災の頃にはまだ脳みそが出来上がっていなかった僕が抱いた不条理。

    これは大切にしないといけない。

    そっと両手で持って言葉に変換した。

    この曲を書いてから夜のうちに雨が降り止んで、晴れて濡れた朝が少し苦手になってしまった。

    苦手というか物悲しい。

    あんなにピカピカ輝いているのに。

     

     

     

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