ハートをおくったユーザー
ハートをおくったユーザーはいません



[#214] 何とも言えない 『KITSUの出会いは胸に来る』
『KITSUの出会いは胸に来る』
最近で言うと。
年末のPOP UPと北海道で吃音がある高校生との対談。
これが直近のKITSUとしての目立った動きだったと思う。
どちらも出会いがあった。
人生においてその人と出会うか出会わないかはほんの僅かな差に過ぎない。
公立の高校に受かっていたらLEGOのメンバーには会っていない。
それと同じように絶対にKITSUをやっていないとなかった出会いが確かにあった。
こんな風に歳を取りたいとかありますか?
僕はなんとなくはあるんですが具体的な人はイメージがなくて。
でもそのなんとなく漠然と持っていたイメージをすごい解像度で具現化した老夫婦が会場にふらっと現れたのだ。
佇まい、物腰、上品さとユーモア。
絶対に若い頃モテまくってたやろうなというお二人。
これはPOP UPでのお話。
旦那様がKITSUのカーディガンを試着し購入いただいた。
とても気に入ってくれて、なんとそのまま着て帰っていかれた。
「色も素材もいいね。僕は今右半身が少し不自由だからこれなら楽に羽織れそうだよ。気に入った!」
嬉しすぎる言葉をクレジットカードと同時にレジに置いてくれる。
吃音症の理解もあった。
横では奥様が笑顔で僕らのやりとりを見守る。
KITSUのカーディガンの上に自前のアウターを着ると一層良いコーデになった。
「久しぶりにお気に入りの洋服が買えたよ。嬉しいなあ」
「いや嬉しいのは僕の方です。ありがとうございます」
なんて会話しながら見送る。
ご夫婦は店を出ると同時に手を繋ぎ、二人で振り返り僕に会釈をし下北の町に消えた。
これは北海道のお話。
北海道は温かい。
暑いでもなく、暖かいでもない。
次の日のライブのために北海道に前日に入った。
空港からホテルへ。
普段なら皆んなとチャックインを済ませてご飯へ向かうところだが今日は違う。
吃音の高校生三人が待ってくれている。
真っ白な景色の中、普通のスピードで走るタクシーに飛び乗った。
対談直前に来てもらえれば大丈夫ですよと言ってもらっていたが、僕はなるべく早く会場に行きたかった。
開始までに彼らと他愛もない会話をしたかったのだ。
固い対談はしたくない。
高校生からしてもいきなり金髪のバンドマンが来て話せと言われる方が無茶だ。
しかも吃音なのだ。
アイドリングトークをしたい。
それを求められていなかったとしたらせめて同じ空間にいて開始時間を待ちたい。
そう思っていた。
タクシーを降りると地面はツルツル滑り、対談の際の僕の話もスベることを暗示しているようで地面をしっかりと踏み締めた。
POP UP二日目。
前日のスタートダッシュよりは少しゆったりとスタートした二日目。
ソールドアウトしてしまったアイテムもちらほら。
店先を見る。
昨日の老夫婦が手を繋いで立っていたのだ。
「あれ?どうしたんですか!今日も来てくれたんですか?」
僕がそう言いながら近づくと旦那様はビックリする回答をした。
「昨日のカーディガンがあまりに気に入ったんで色違いを買いに来たんだよ」
そう言ってアイスグレーのカーディガンを触りながら言った。
「試着しなくても着心地わかってるからこれ買います」
少し不自由な右半身を工夫しながら動かし財布からカードを出す。
「今日は流石に来て帰らないから袋に入れてね」
いちいちカッコいいのだ。
ご夫婦は店を出ると同時に手を繋ぎ、二人で振り返り僕に会釈をし下北の町に消えた。
昨日だけでも胸に来ていたのに、ダメ押された僕の胸はその魅力と嬉しさで打ちのめされている。
北海道での対談はYouTubeにもあるのでそれを観てもらいたい。
三人はそれぞれ個性的でチャーミングだった。
全員を抱きしめたい。
最後に僕は心を直接触られるほどの言葉を高校生から貰ってしまった。
三人の中でも一番シャイで口数が少ない男の子がいた。
彼が最後の感想でこんなことを言った。
「これまで将来に希望を持てなかったけど、対談を通して頑張ろうと思えるようになった」
僕だけではなくその場にいた大人たち全員の涙腺が刺激されたのではないだろうか。
まだカメラが回っている。
僕はその蛇口をぎゅっと締めた。
次の日のライブに彼らを招待している。
もっと素敵な時間を過ごしてもらいたいと気合も貰った。
人生で何か一つでも違う選択をしていたら彼らに会えなかったのか。
それともどんな道でもそこに繋がっていたのか。
それは誰にもわからないけど、この道も悪くないと思える出来事だ。
彼らのおかげで大したことない僕の人生も正当化できそうなんだ。
こちらのコラムが気に入った方はハートでのご支援をお願いします。
支援金の一部は、吃音症で苦しむ方々のNPO法人へ寄付されます。