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[#23] 何とも言えない 『学校ではあらゆるものが没収される』
『学校ではあらゆるものが没収される』
中学から弁当生活だった。
基本的に毎日オカンは弁当を持たせてくれた。
それが当たり前じゃないことに気づくのには時間がかかった。
たまには購買や学食が食べたいと僕から明日は弁当はいらないと言うことがあった。
オカンは作らなくてラッキーという顔をするかと思ったが、少し悲しそうな顔をしていた。
高校生から携帯電話を持たせてもらっていた。
クラスのほとんどが持っていたと思う。
体育の授業で携帯を教室に置いていき、帰ってきたら着替えるより先に好きな子からのメールがないかチェックした。
来てなければセンター問い合わせまでして。(センター問い合わせが何かわからない人はお父さんに聞いて)
携帯を先生に見つかれば没収される。
没収されるのは携帯だけではない。
漫画やお菓子など。
それらは見世物のように教壇に置かれる。
たまに先生の教壇は没収した物で溢れた。
いつも弁当ではなく学食で昼飯を食べる友達がいた。
家庭の事情もあるだろうし特に何も思っていなかった。
親から毎日お金をもらい学食を食べる彼を見て僕は逆に羨ましく思い、たまにオカンに明日は弁当はいらないと言っていたのだ。
体育の後は腹が減る。
男子校だった僕の高校では早弁なんて当たり前で、なんなら授業中も食べていた。
それを先生に見つかり、その口の中の物を吐き出せと言われ頭をどつかれた。
後ろの席ではシンタローが笑っていた。
いつも学食の彼が言った。
「もう学食のメニュー食べ尽くしたから飽きた」
なんてかっこいいセリフだろうか。
僕からしたらかっこよかったのだ。
「じゃあ昼飯どうすんの?」
僕の質問に彼は少し悩み、閃いた顔をし、その顔は見る見る何か企む顔に変化した。
どこかに電話している。
先生に携帯がバレないように。
それは三時間目が終わった休み時間。
四時間目が始まって気づいたら終わりのチャイムが鳴る。
学食とは違う方向へ歩き出す彼。
まぁ僕はオカンの弁当があるし、気にせずに別の友達と机を並べる。
そして五分後、彼が教室に帰ってきた。
その両手にはピザハットの箱が抱えられていた。
教室の入り口にピザを抱えた友達が無表情で立っているだけで男子校の僕らは倒れ込むほど爆笑できるのだ。
そこからは彼は一躍人気者だ。
高校の教室でピザが食べれることなんてない。
ピザパーティーがいきなりスタートする。
高校の昼飯にデリバリーピザを注文し、先生にバレないよう校門から少し離れたところに持ってきてもらう彼。
天才なんじゃないかと思った。
そんな発想ないから。
僕らは彼を褒め称え弁当を彼に分けたり、僕らもピザを分けてもらった。
最高な友情だ。
最高な空間だ。
先ほど彼がピザを抱え立っていた教室の入り口に担任の先生の富田が無表情で立っていることに気づくまでは。
今でも納得がいっていない。
なぜあんなに怒られたのか。
意識が飛びそうなほど怒られた。
しかも申し訳ないのが英雄のデリバリーを頼んだ彼が気絶するんじゃないかというくらい怒られていた。
納得いかない。
もしあのピザを彼が家から持ってきていたら怒らないのだろうか?
彼の親が弁当の代わりにピザを持たせていたなら怒らないんじゃないだろうか。
それなら温かいピザを食べるためにも三時間目くらいに注文した彼は賢いはず。
ピザは没収された。
いつも通り教壇の上に。
教壇にはピザハットの箱。
そして教室はピザの香りで満たされていた。
そんな五時間目。
ピザを没収されただけではなく、何だかキラキラしたワクワクしたでも少し悪いことしてる自覚はある。
そんな名前のない感情まで、心まで没収された気持ちになった。
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