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[#22] 何とも言えない 『一人リサイタル』
『一人リサイタル』
選曲にセンスが問われている気がする。
ベタな曲は歌いたくない。
いや、こんなこと考えずに流行っている歌をうろ覚えでもいいから歌えばいいのだ。
そう思っても頭に何も出てこない。
圧倒的に流行っている歌を知らないのだ。
たまに行くカラオケは自分が時代に追いついていないとこを認識させられる狭くて暗い箱だ。
誰かが入れた懐かしい曲は、あぁそれ歌いたかったから入れれば良かったとなる。
誰かが入れた最新のMVも流れる曲は、知らない代わりにその映像に食い入る。
「このボーカルこんな顔してたんや」
そんなこと言っても「知らなかったの?」という顔をされるだけだ。
また別のグループ歌手を歌う友達。
これもMVが流れる曲だ。
「このグループってメンバーこんなにいたの?」
そんなこと言う僕はとうとう無視された。
僕の順番が来る。
イントロが流れる。
それを少し聴き一人の友達はトイレへ。
別の友達は携帯を持ち電話がかかってきたという申し訳なさそうなジェスチャーで部屋を出た。
そういえばもう一人いたはずの友達はタバコを吸いに行ったきりさっきから部屋にいない。
白い歌詞に流れるように色がついていく。
慌てて歌に追いつくとそこはもう僕の一人リサイタル。
悲しみを纏った僕が一人で歌う松山千春は誰に聴かれるでもなく一番で幕を閉じた。
別に嫌われてるわけでもなく、ただただタイミングが悪かっただけだと思いたい。
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