Users who sent the Heart
No user sent the Heart yet..
[#206] 何とも言えない 『あやふや』
55
『あやふや』
僕はいつだって”あやふや”を形にしている。
歌詞も、音楽も、吃音も元々は形のないもの。
言葉にできない思いを文字にして、伝えられない思いを音楽にして、目に見えない障害を啓蒙して。
新たな試み。
フレグランスだ。
今回のPOP UPでコラボアイテムとして販売した。
こちらも”香り”という形のないものだ。
香りだけではなくてそれぞれしたためた”詩”を付属させよう。
そのカードに香りをふりかけて詩と香りを楽しんでもらおう。
なんておしゃれな発想だ。
今回コラボしたヒロさんからアイデアをもらいその方向で進んでいく。
コラボのお話は前のコラムで書いたので割愛するが、今回はこの”詩”の話を。
バンドではずっと歌詞を書いてきた。
KITSUではずっとコラムを書いてきた。
この辺は少しだけ自信がある。
しかし。
詩は書いたことがない。
いざ吃音と香りと自分に向き合う。
言葉が出てこない。
捻っても一滴も水が出ない蛇口のように。
もしくは言葉が出過ぎてしまう。
捻っても水が止まらない蛇口のように。
詩を書くことはとてもとても難しい。
僕はどうしても説明してしまうのだ。
そして僕はどうしても言葉にリズムをつけてしまうのだ。
これでは詩にならない。
現実的なことを言うと紙の余白が足りない。
最後は書く作業ではなく、削る作業が僕の詩を書くという行為になっていた。
完成した詩はフレグランスを買ってくれた人のためにここでは発表しない。
でも僕があの完成させた詩にどのように辿り着いたのか。
つまりこの後に載せる詩はまだ荒げずりであり、デッサンであり、デモだ。
削る前の原石とも言える。
タイトルは決まっていたし、変更はない。
”あやふや”だ。
「吃音やったんやね、ごめんね」
オカンからの連絡
鈍痛
KITSUを発表したばかりの誇らしい胸に絆創膏を貼る
謝らせてしまった
この感情は名前を欲してはいない
形のないものを追いかける
音楽、吃音、香り
なんて”あやふや”なんだ
データ?エビデンス?なにそれ美味いの?
最近名前をつけたんだ
タ行は吃るから避けた
愛おしい”あやふや”を可視化して
これは君の名前だよ
冬の青白い朝
校庭から合唱が聞こえる
昨日余った肉じゃがを温める昼
猫の肉球は香ばしい
首の座っていない愛に触れて眠る夜
形はないけど確かにそこにある
今日も”あやふや”のままでいて
これは僕だけのものだよ
形にしないと伝わらない
掴めない砂に
想いという水を混ぜて固めた
不恰好だけど
これは君に贈るものだよ
以上です。
荒削りの詩を読んでくれてありがとう。
そしてPOP UPに来てくれた人ありがとう。
吃音を知ってくれてありがとう。
来年またPOP UPやったら来てくれたらありがとうを直接言わせてください。
こちらのコラムが気に入った方はハートでのご支援をお願いします。
支援金の一部は、吃音症で苦しむ方々のNPO法人へ寄付されます。