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    [#196] 何とも言えない 『嬉しい悪態~東京言友会に寄付して来ました~』

    KITSU

    2024/10/07 19:00

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    『嬉しい悪態~東京言友会に寄付して来ました~』

     

    雨が降りそうな夕方。

    言友会という吃音における日本最大のNPO法人。

    そこに僕は呼んでいただいた。

    日頃のKITSUの活動を見てくれている人がいるのだ。

    そのお声がけがとても嬉しくて雨が降りそうな空の下でも晴れやかな顔で歩いていた僕。

     

    例会がある。

    言友会員の人も非会員の人も。

    吃音に悩んだり関心がある人が集まる。

    ご本人はもちろん、息子が吃音だと悩むお母さん。

    色んな人がいる中で僕はお話をさせてもらう。

    「まずは自己紹介しましょう」

    司会の方がそう言うと吃音の人たちは吃りながらも上手にそれぞれ自己紹介をする。

    「あれ?吃音者にとって自己紹介が一番苦手なことじゃなかったでしたっけ?」

    と言いながら僕は自己紹介をしたが、おそらく僕が一番吃っていた。

    やはりタナカは言いにくい。

     

    例会が終わる頃には雨が止んでいた。

    最寄りの駅までの道も皆さんと歩く。

    もう心の距離は例会のスタート時とは違う。

    僕は吃りは出ない。

    しかし緊張感がある方が吃りにくいという方もいる。

    心の距離が縮まってしまったが故に吃りが強くなっている。

    初めの自己紹介はあんなに上手に話していたのに。

    吃音とは本当にその人それぞれなんだと再確認する。

     

    荷物に潜ませていた。

    今回はゲストとして例会でお話をしてくれという案件だった。

    でも僕はサプライズで寄付を持って行った。

    家にあるなるべく綺麗な封筒に五万円を入れた。

    皆さんから預かっている、皆さんの想いだ。

    それを今回は五万円、僕が代表して寄付させていただきました。

    言友会には大変喜んでいただきました。

     

    リアルな話をしていいですか?

    五万円をどう捉えるか。

    KITSUはそんな大きなブランドでもない。

    KITSUは有名コラムニストが書いているコラムでもない。

    その売上の一部から今回は五万円を捻出した。

    皆さんが買ってくれた洋服やコラムにしてくれた支援から。

    正直そんな余裕な金額ではない。

    Tシャツを何枚売れば、アクセサリーを何個売れば、コラムを何回書けば。

    みたいな計算をしてしまうのは野暮だが、そのくらいKITSUは小さい。

    でも封筒を渡した時はそんなこと考える余白はない。

    ただただ喜んでくれる人と、購入や応援をしてくれた人の想い、それをたまたま代表して渡す人間。

    言友会が今回の寄付も大切に使ってくれることを願う。

     

    例会で話したこと。

    「僕は吃音が治る薬があるなら今すぐにでも飲む。それを受けて皆さんはどうですか?」

    と質問してみた。

    印象的な回答ばかりだった。

    「それを飲むと今までの吃音の自分を否定しているような気分にもなる」

    こう答えてくれた方がいた。

    とても理解できる。

    「とはいえそんな薬あれば飲むんでしょうけどね」

    と笑いながら最後に言っていたのも人間らしくて良い。

     

    別の方はこう答える。

    「吃音があって良かったことなんて少ないからそんな薬があれば飲むかもしれないです。でも吃音があって良かったことが一つだけあって、”吃音の人の気持ちがわかること”です。僕も吃音じゃなければその気持ちはわからないままの人間だった」

    今すぐにでも飲むと言った自分が恥ずかしくなったが、その後にやはりすぐに飲むかもなとも思った。

    その方の言葉は帰りの電車の中でも僕の脳の中でディレイの音のように響く。

     

    今回僕が来るということで参加してくれた人もいた。

    こんな僕でも。

    自己紹介で数名にそれを言われたもんだから涙ぐんでしまった。(最近赤ちゃんが産まれて涙腺がガバガバになっている)

    もちろん彼らはLEGOのファンとかではない。

    前から参加したかったし、吃音のミュージシャンのお話を聞けるということで来てくれたのだ。

    次はライブに来てほしい。

    あの会議室で話した時より、ステージで悪態ついている僕の方が流暢に話している。

    その悪態が彼らに勇気を与えるならそんな嬉しい悪態はないのだから。

     

     

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