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[#171] 何とも言えない 『花見は寒くて切ない』
『花見は寒くて切ない』
人間は何度も同じ過ちを犯す。
スマホをなくしたり、二度寝してしまったり、誰かを傷つけたり。
ダウンコートをしまって、ある者は卒業しある者は入学する。
健気に咲いた桜は風に揺られ、雨に叩き落とされ、それでも満開の時を待つ。
落ちてきた花びらがビールの飲み口に乗る。
今日は発泡酒じゃなくてビールが良いか。
買ってきたものツマミ、誰かが作ってきたサンドイッチ、Bluetoothのスピーカーなどあれば尚良い。
ゴザを広げて座る地面は思っているより硬い。
隣の花見客は犬がいてそれだけで華やかだ。
その隣はボールを持参してアクティブに遊ぶ。
僕らは酒と食べ物とゴザというレベルゼロの時の勇者の装備で毎回花見に来てしまうのだ。
せめてもの思いで広場の横にある公園のブランコで遊んでは酔いが一層まわるのだ。
だがもうこれだけは言わせてもらう。
もう何回だって言わせてもらう。
これは自分に対しての戒めも込めた言葉だ。
では言います。
「お前が思っている以上に花見は寒い!!!」
「絶対に舐めた格好で花見なんてするんじゃない!!!」
「夜桜なんて行くな!!!」
一旦以上です。
風よ、やんでくれ。
花びらが落ちてしまうから。
そして僕が凍えているから。
舞う花びらは綺麗だが、砂埃がビールの飲み口についてジャリッと鳴った。
何回だって忘れる。
何回も言わせるな。
何回も凍える思いをしたことを。
花見を毎年毎年やっているなら学ぶのかもしれないが、不定期にやるもんだから忘れる。
正直ダウンコートで行ったっていい。
行きの道中が暑いくらいだ。
それ以降は絶対に重宝する。
じゃあ夏に満開になる花の下皆んなで宴会をすればいいのか。
それなら寒さなんて感じずに済む。
いや、それもまた何か違うんよな。
何で日本人は桜に情緒を感じてしまうんだろうか。
遺伝子レベルでそう組み込まれているくらい寒かろうが桜の下で仲間と時間を共にする。
それなら多少寒かろうがいいか。
結局冷たいビールを自ら飲んで寒いなんて言えないんだから。
何年か前。
花見をしていた時に友達が死んだ連絡を受けた。
かと言ってどうすることもできない。
「まじすか。。。」
電話を切って見上げた空は青とピンク。
そいつとは全く面識のない周りの人に気を遣わせないように普通に振る舞った。
花びらが舞って焼いていた海老に乗っかる。
家で一人で泣いたってそいつは帰ってこない。
今日が仲間との花見で良かったとその時思えたんだ。
酒はほどほどにして帰って歌詞を書いた。
次の日ため息が雲になり桜の花びらを落した。
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