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[#160] 何とも言えない 『電動自転車』
『電動自転車』
元マネージャー鈴木の遺品としてロードバイクを貰った。
(彼は死んでいません)
「FUJI」というブランドの自転車で、あまり詳しくない僕でも名前を知ってるくらいのロードバイクとしては高価な自転車だ。
真っ白のフレームに真っ白のタイヤ。
今まで乗っていたものはチャリ、これはロードバイク。
そう言えるほどこれは自転車というより、やはりロードバイクなのだ。
スイスイと進む。
太ももの力がダイレクトに伝わる。
どこへだって行ける。
元マネージャー鈴木の遺品はとうとう寿命を迎えた。
(彼は死んでいません)
何度も修理を重ねた。
パンクをしてはわざわざ白いタイヤを取り寄せ、修理代払うなら新しいの買った方が得ですよと言われながら。
それでも頑張って僕を色んな場所に連れて行ってくれた。
東京の道が詳しくなったのもそのロードバイクのおかげだ。
さらばロードバイク。
次はそんな自転車を買おうか。
もういい歳だ。
そろそろ楽をさせてくれ。
かっこよさよりも利便性を取った。
電動自転車だ。
とは言っても見た目も妥協はできない性分。
かっこいいというよりも可愛いパナソニックの製品だ。
試乗したら、これはもう普通の自転車には戻れないと確信した。
だって軽い力でスイスイ進むんだもの。
「え?電動自転車の人ってこんなに楽していたの!?」
そう呟いた。
なんで今まで誰も教えてくれなかったのよ。
ギアを駆使して登ったあの坂もこの坂も。
今では平らな道と化した。
電池の減りを気にしながらも雨じゃなければ大体の場所は電動自転車で向かう。
もはやある程度の生活圏内は自転車で行ける距離にあるのだ。
そのように生活を変化させていったとも言える。
渋谷だって新宿だって余裕で行ける。
大阪の田舎に住んでいた頃、自分が渋谷や新宿に自転車で行ける距離に住んでいることを想像できただろうか。
ボクシングジムに行く際も跨る。
実はこれが一番伝送自転車のありがたみを感じるかもしれない。
なぜなら足に乳酸がパンパンに溜まった状態で汗もひく前に帰路に着くことが多いからだ。
そんな足で今までは重いペダルを漕いでいたが、今では楽に家に着く。
細かい話をすると。
ロードバイクにはカゴなんてなかったが、今の電動自転車にはある。
グローブ、着替え、シューズ、水筒全て入る。
自転車のカゴってこんなに便利だったのね。
なんで今まで誰も教えてくれなかったのよ。
そうは言ってもジムのトレーニングはきつい。
帰りの自転車は電動でも辛い時がある。
ジムにはシャワーがあるものの自宅は近いのでそのまま帰って自宅の風呂、もしくは自宅近くのサウナになだれ込む。
今日はどちらにしようかなと銭湯の横を通る。
「ジム頑張ったしご褒美にサウナ入って帰ろうかな」
ご褒美にしてはサウナの回数は多い僕。
すると細い道の向こうからお婆ちゃんが自転車でやってきた。
ゆっくりゆっくりペダルを漕ぐお婆ちゃん。
すれ違う瞬間僕は見た。
お婆ちゃんは電動ではなく、普通の自転車だった。
「お婆ちゃん、そろそろ電動自転車で楽させてくれなんて言ってごめんなさい」
申し訳ない気持ちになり僕は家の風呂に入った。
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