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    [#2] 行間と字余り 『ワープ』

    KITSU

    2021/01/13 19:00

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    ワープ

    【名】

    1、ひずみ、ゆがみ、ねじれ

    2、宇宙空間のひずみを利用して瞬時に目的地に達すること


    深夜2時、ガストで不毛な激論が交わされていた。

    羽曳野と富田林の間にあるガストに平日の夜中集まれるという時点で色々と問題を抱えている人たちが集まっていた。

    もれなく僕もその一人だ。

    アインシュタインの相対性理論。

    誰も理解できていないのにそんなところまで話が飛んでいた。


    デビューが決まった。

    何から何まで初めてのことで面食らっているが、そんな素振りを見せないでいようとダサい僕はダサさを上塗りした。

    何の曲をリード曲にするかの会議を重ね、まだ地名もわからない東京のどこかでワープで行こうというふうに決まった。

    僕はあの田舎のガストを思い出して笑った。


    時間というのは自分で支配できると藤田は言う。

    んなあほな、と藤田の顔は見ず僕は言った。

    ドリンクバーのジュースの種類はだいだい飲み終わり、二周目のコーラに落ち着いていた。

    楽しい旅行の一日という時間は一瞬で終わるのに、煩わしいバイトの一時間は永遠のように感じる。

    それらはそう感じているのではなく、事実その体感時間分を過ごしているのだと。

    つまり楽しいことばかりをしている人は一瞬一瞬の時間しか人生を過ごしていないから若々しく。

    煩わしいことばかりしている人はたくさんの時間を過ごしてしまっているから老けていくのだと。

    んなあほな、と藤田の目を見て僕は言った。


    東京に来ると僕らは中目黒にあるホテルに泊まった。

    その日は泥のようにそこで眠ることになる。

    人生初めてのMV撮影を終えたのだ。

    緊張が血液よりも血管を走った。

    ライブくらいの激しい演奏パフォーマンスを何十回も行う。

    本当に声を出さなくてもいいのにキンタは何十回も熱唱した。

    スタッフの方が上司に怒られながら走り回り、カメラ、照明、ヘアメイクなど。

    プロを初めて目の当たりにしたプロ一年生の僕ら。

    でも達成感なんてなかった。

    疲れしかなかった。

    今を生きてるという感覚の尻尾は見えた気がした。


    大阪といっても僕らの実家は田舎にあって車がないと生活できない。

    運転中802を聞くと事故りそうになる。

    なぜならワープが流れている。

    流れまくっている。

    この曲は色んなラジオ局のパワープッシュに選んでいただき僕らの代表曲になった。

    流れている四分間の実家の車からの景色はいつもと違うものだった。

    曲が終わる頃ハンドルを握る手は汗でぐっしょり濡れた。


    あの日夢見た僕を追い越した。

    あれはいつかの僕だった。

    未来を見据えるでもなく、過去を引きずるでもなく、今の僕が僕を追い越した。

    大阪の田舎のガストから名前もわからないステージに僕らはワープした。








    『ワープ』


    初期衝動でループ

    針は規則正しく何かを刻む

    時を刻んでんの?

    それならば今僕は何歳ですか?


    時間軸は突っ立て

    支配欲は皆無で

    僕が動いて何か変わるなら

    時間軸を揺らして

    支配欲を100 にして

    時空とか、次元とか超えて


    明日の僕を追い越した

    あれはいつかの僕だった

    ワープ

    針は僕自身で

    未来を見据えるでもなく

    過去を引きずるでもなく

    ワープ

    不規則に動かす


    1 日が24 時間だってことも忘れて

    素敵な時間はあとどのくらい続くの?


    Time is mine


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