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[#153] 何とも言えない 『あの歌詞ええな』
『あの歌詞ええな』
子供の頃に褒められたことを真に受けて調子に乗るのが得意だった。
そのおかげで野球では本当はやりたくなかったキャッチャーになった。
「球取るの上手いね!」
と誰かに言われでもしたんだろう。
ライブハウスの先輩たちは本当に僕らを可愛がってくれた。
だからこそきちんとダメ出しもしてくれた。
ギターもライブも曲も歌詞も姿勢も挨拶も筋も。
「今度の東京に行くツアー一緒に行くか?」
そんな先輩にツアーに誘われた時は嬉しくて嬉しくて。
ツアー中の出来事を全て忘れたくなくて僕は脳裏に焼き付けた。
あれから少し時が経ち、あんなに焼き付けた記憶も少しずつ薄れていく。
ならばとそれを言語化したくなった。
日記でも書くのか?
いや、曲にするのだ。
ボーカル以外が歌詞を書いていいなんて思っていなかった。
でも僕には今回ばかりはネタがあった。
「あのデモの曲、歌詞書いてみていい?」
と言ってもこの曲の前にも歌詞は書いたことがあるので特に不思議がられずに許可を貰えた。
でもその頃はまだLEGOBIGMORLの作詞家という自負も肩書きもなかったため少し勇気のいる行為であった。
「あの歌詞ええな」
この言葉のおかげで僕は今ここにいる。
この言葉にすがりついてここまで来たとも言える。
「あざす」
先輩にはそれくらいそっけない返事しかできなかったが、心は踊り顔は赤らんでいた。
あ、僕の歌詞は悪くないんだ。
そう思える初めての反応。
あの言葉のおかげで今日も立てています。
打席に、生活的に、地面に、一人でも。
立てている。
もし誰からも褒めてもらえていなかったら今頃何にすがって生きていたのだろう。
必死で自分にしかできないことを探していたのだろう。
そんな世界線も悪くはない気もする。
でも「あの歌詞ええな」と言ってくれた平井さんに感謝しかない。
じゃああの言葉を貰ってから着実に成長しているのか?
作詞家として右肩上がりでいれているのか?
こんなコラムを書く資格がある人になれているのか?
正直全く自分ではわからないが、新曲を出すたびに歌詞に感銘を受けてくれる人が少ながらずいるなら少し安心してもいいのかもしれない。
何たって昔は平井さん一人しかいなかったのだから。
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