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    [#151] 何とも言えない 『鍵を閉める時の温度』

    KITSU

    2023/11/27 19:00

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    『鍵を閉める時の温度』

     

    「わざわざ来てくれてありがとうね」

    僕の家には来てくれる友達が少しだけいる。

    その人を玄関まで見送る時は玄関の照明をつけてあげる。

    誰もが基本的に夜に帰る。

    酒を共にするのだ。

    その誰もが扉を開ける時に猫が脱走しないように気を配ってくれる人ばかりだ。

    リビングの扉は閉められ、そのガラスから猫二匹がその様子を見ている。

    「猫の毛が服についてるやろけど、ごめんな」

    僕はそう言って一応玄関にあるコロコロを差し出すが、みんな大丈夫と言う。

     

    車のクラクションの音量は一定だ。

    優しく鳴らしても強く鳴らしても音量という意味では同じ。

    感謝のクラクションも、警告のクラクションも。

    「ファン。。。」

    と優しく鳴らしても閑静な住宅街では響き渡るに違いない。

    「ビィービィー!!!!!」

    環状線で響き渡る争い合うような罵り合うような轟音も同じ音量。

     

    夜の住宅街。

    野良猫の声がする。

    たまに歌いながら自転車を漕いでいる人もいる。

    そんなにご機嫌になってみたいものだ。

    扉の中と外で聞く雨音に違いがあるように、衣食住の「住」の中と外では全ての捉え方も変わる。

     

    「わざわざ来てくれてありがとね」

    僕にも家にお邪魔させてもらう友達が少しだけいる。

    その人は玄関まで送ってくれることが多い。

    僕も基本的に夜に帰る。

    酒を共にしたのだ。

    「じゃあまたね」

    なんて言い合って扉の隙間から顔を見合わせる。

    そこにはお日様のような温度感。

    「バタン」

    そう音を立てて閉まる扉の温度は夏場の水道水のようにぬるい。

    回れ右して踏み出せばそこからの道は帰路になる。

    「ガチャ」

    背中で感じる鍵が閉まる音。

    それは水が凍るか凍らないかの瀬戸際。

    零度。

    そこに温度はない。

    なんで家の外で聞く鍵の閉まる音はこんなにも冷たいのか。

     

    友達が帰るのを覗き穴から見る。

    今日の僕の家での時間は楽しんでくれただろうか。

    酒やご飯は足りただろうか。

    千鳥足だが無事に家に帰れるだろうか。

    友達が扉から離れたのを確認して今日も僕は中から鍵を閉める。

    鍵音が聞こえたとしても温度感があるように閉める。

    でもいくら注意を払ってゆっくり閉めても閑静な住宅街に我が家の鍵を閉める音が響く。

     

     

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