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    [#150] 何とも言えない 『十一月に鳴った音』

    KITSU

    2023/11/20 19:00

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    『十一月に鳴った音』

     

    物心なんていつの日か。

    居心地だけでいうとお母さんのお腹の中が一番に決まっているのに、知らぬ間に生まれ落ちてた。

    誰に頼んだわけでもなく、まだ寝ていたいのに。

    お母さんの中という安全な世界から、希望と絶望に溢れた現実世界へと産み落とされた。

     

    それと全く同じ原理で、知らぬ間に恋に落ちてた。

    誰に頼んだわけでもなく、まだフラフラ、フワフワしていたいのに。

    魂を見せ合う契約。

    それはまるでお互いの嫌なところを突く仕草にも似ていた。

     

    親は選べないもんね。

    とはよく言うけど両親のものに生まれることができて良かったと思える僕は幸せなんだろう。

    しかしそこからの人生は自分の意志で選ばなければならない。

    友達も、バンドメンバーも、パートナーも。

    もう幼くない。

    時間がある程度過ぎた今、年をある程度重ねた今を午後と捉えるならば。

    午後には日の当たる部屋で、その選ぶべき人を待とう。

     

    「君じゃなきゃやだ」

    こんなセリフはもう似合わないのは重々承知だ。

    だから確認しておく。

    似合わない甘い声出していいかい?

    熱いキスやセックスでもない。

    手の甲が常に触れているような絶妙な距離感での愛。

    明日は何しようか?と言い合えるのは幸せなことで。

    その明日が酸いのか、甘いのかもわからないけど。

    それでも明日があることは幸せなのだ。

    もし立ち向かえないような明日が来たなら、僕らてを繋いで逃げればいいさ。

     

    いたずらに時を重ねた。

    傷つけて、愛し合って。

    自由で気ままな男でいるのにも憧れるけど、生活を分け合うという弊害を甘んじて受け入れる。

    一人で生きる方が楽に決まっているのに。

     

    物語は続く。

    自分の意志で栞を挟む。

    忘れちゃいけない今に。

     

    何も起こらない。

    そんな日常こそ愛おしいドラマだ。

    目の奥が常に濡れている絶妙な涙が今日も。

    飽きたら何しようか?と言いながらも次の未来も行列を成している。

    もし差し支えないならば最後の未来まで僕といてくれますか?

     

    当たり前のように黄昏の時間。

    変わり映えのない毎日を繰り返す。

    暗闇に怯えて、朝焼けに笑い合おう。

    おはようからおやすみを今日も繰り返す。

     

     

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