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[#148] 何とも言えない 『スプサマとLEGOという関係性』
『スプサマとLEGOという関係性』
ハードなロックが鳴るライブハウス。
壁は落書きとステッカーだらけ。
どこもかしこも喫煙可能で煙が立ち込める。
刺青だらけのスタッフ。
そこで少し爽やかな音を出すバンド。
それがThe Spring SummerとLEGOBIGMORL。
明らかに浮いていた。
全員いまだに大学生みたいな格好をしていた。
今は令和やぞ。
それでも適当な格好で不意に鳴らす音がリハからカッコよかった。
あの頃にタイムスリップした感覚と新しいライブハウスの匂いが混ざり酔いそうだ。
彼らの音は涙腺に来る。
理由なき涙。
僕の思い入れもそこにはあるが、そんなことは関係のない涙がまぶたに溜まり溢れないように目の奥へ追いやった。
ここは大阪の難波。
僕らはいつも大阪では実家に泊まる。
経費も抑えられるし、親にも会える。
でもこの日ばかりはホテルを取ってもらった。
彼らと心置きなく打ち上げをするために。
大阪以外にも一緒に行った。
冬のサービスエリアで裸で走り回ったり、東京の知り合いの家に総勢八人で泊めてもらったり、彼らとの打ち上げの乾杯の瞬間に僕が肺気胸になったり。
全てを羅列するのは難しい。
彼らと僕ら、そこにハイテンションセックスガールというこの世で一番下品なバンド名(適当なAVの作品名からとって命名したらしい)のバンドを加え、人数が十一人ということで「ウイニングイレブン」というこの世で一番ダサいタイトルのイベントをやっていた。
その打ち上げがラウンドワンのボウリング。
あの頃はそれが恒例だった。
この日を実現するにあたって僕とスプサマのギターの森が連絡を取り合った。
「仕事休めるかまだわからんねんなー」
後輩のくせに基本的にタメ口で話してきやがる。
キンタとシンタロウには敬語のくせに。
彼らは全員がそれぞれ仕事をしながらバンド活動をしている。
練習の日の時間を合わせるのにも苦労するという。
それでも全員が仕事の都合をつけてくれたことにより実現した対バン。
それまでに何度もタメ口の電話を重ねた。
でもその時間すらも愛おしかった。
次の日は山口県に移動。
逆に言えば移動するだけの日。
シンタロウはいつも打ち上げもあまり出ずにホテルに帰るタイプだが、この日は違う。
そんなところからも今日が特別であることがわかる。
もうボウリングは昔のように六ゲームもできなかった。
ライブに話を戻す。
本番は彼らも僕らも最高のライブをしたと思う。
この日に向けての思いがそれぞれ溢れ出たようなライブだった。
最後の曲で森がステージ袖に居る僕の方を向き何やら一言言った。
爆音なので聞こえはしないが、確実に口の動きはわかった。
「ありがとうな」
やはりタメ口だった。
お客さんの方の前を向き直し演奏したが、後で聞いた話ではそこから森は泣いていたらしい。
後で聞いて良かった。
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