[#142] 何とも言えない 『あんなバンドになりたかったし、こんなバンドにもなりたかった』

『あんなバンドになりたかったし、こんなバンドにもなりたかった』

かっこいいというものは多彩だ。

白には白の、黒には黒の、カラフルなものにはカラフルなもののかっこよさがある。

イケメン俳優のかっこよさと、お笑い芸人のかっこよさは違う。

上品なかっこよさもあるし、泥だらけのかっこよさもある。

とにかく僕はかっこよくなりたいのだ。

モッシュダイブが起こるバンド。

お客さんが微動だにしないバンド。

それぞれ感動も興奮も確かにそこにはある。

目に見えるものだけで測れないのだ。

目に見えない音楽をやっているのだから尚更。

警察官になりたい。

サッカー選手になりたい。

吉本新喜劇に入りたい。

学校の先生になりたい。

インテリア関連の仕事に就きたい。

バンドマンになりたい。

小さい頃から思い出すだけでもこれほどの夢を見た。

このうちの一つしか叶えられていない。

それぞれ全部かっこいい。

人生を賭けたバンドは何個もできない。

僕が思うかっこいいは全部実現することは不可能。

何かを諦めて、何かを選ぶ。

そうこうしていると間違えそうになる時がある。

もしくは勘違いされそうになる時がある。

選んでない方のことをカッコ悪いと思っているんじゃないか。

と。

選ばなかっただけで、そちらのことが嫌いでも否定してるわけでもないというのに。

僕が選んだもの、僕が好きなもの以外はカッコ悪い。

そう思っていた若い頃があった。

その時点で僕が一番カッコ悪いのだが。

そうでもしないと自我が保てないお年頃とも言える。

じゃあ今は「皆んな違って、皆んな良い」というマインドかと言われればそうではない。

このマインドには恐怖と危うさを感じている。

自分の琴線に触れるか触れないかの物差しは持ち合わせているつもりだ。

全ては手に入らない。

選んだり、捨てたり、願ったり、割り切ったり。

器用ではないのでLEGOBIGMORLというバンドしか背負えない。

その中で出来ることと、出来ないこと。

そして似合うものと、似合わないもの。

求められているものと、やりたいこと。

毎日バランスとセンスをフル稼働だ。

バランスもセンスも持ち合わせているか怪しいのに。

後悔ないように生きよう。

とか。

悔いのない人生。

とか。

そんな言葉をよく耳にする。

けどそんなことあり得るのだろうか。

事実僕は後悔ばかりを繰り返している。

でもじゃあ今の自分が嫌なのかと言えばそういうことでもない。

選ばなかった方の人生の行方が少し気になるのだ。

絶対に知る由もないのに。