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[#134] 何とも言えない 『オートロックの必要性』
『オートロックの必要性』
結構な数の友達が前の家に遊びに来てくれたもんだ。
特に広いわけでもなく、特に綺麗なわけでもない前の家は程よい築年数で僕は大好きだった。
何だか落ち着くのだ。
たぶんタワマンとか一生住めないと思う。
経済的な理由は棚に上げながらも。
何よりオートロックというものがめんどくさい。
友達の家に行っても部屋に辿り着くまでに何回も押さないといけないチャイム。
ちょっとコンビニ行こうと思ってもマンションから出るのに何分かかるんだろうか。
でもある事件で僕はこんな思いに懺悔しなくてはいけなくなる。
Magic of Lifeのギターのタクミは前の家のご近所さん。
慕ってくれ、よくうちに来ては飲んだりしていた。
飲むと言っても彼は禁酒中で永遠と炭酸水を飲んでいる。
彼の誰からも好かれ、誰の懐にも入っていける人柄は本当に尊敬に値する。
タクミが自分の家のように僕の家でくつろぎ出すもまったく嫌な気にならないのだ。
うちの猫は誰より彼に懐いた。
大阪の地元は鍵すらかけない家が多かった。
今はそんなことないのかもしれないが。
子供の頃はよく勝手に友達の家に入って遊んだもんだ。
キンタさんは東京の一人暮らしの家も鍵をかけないでコンビニに行くくらいだ。(今はそんなことないと願う)
防犯意識はかなり低かった。
確かに実家が一軒家の人はオートロックというものに執着がないように思う。
「ガチャ!」
家の扉が開く音がして、風が入りリビングに続く扉がガタっと動く。
そんな二十三時。
こんな時間に連絡もなしにピンポンも押さずにタクミがやってきた。
まぁええけど。
と、その時までは思っていた。
奥さんと顔を見合わせながらも玄関に向かう。
そこで僕はこう叫ぶことになる。
「お前誰やねん!!」
タクミが来ているのに関西人のノリのボケで「お前誰やねん」と言ったと思っていたらしい奥さんはリビングから出てこず。
逆にそれでよかった。
僕はといえば、脳内がパニックになりながらも「お前誰やねん」を絞り出していた。
本当にまったく顔も知らない金髪の若者が玄関に立っていたのだから。
パニクりながらもこれ以上家に居させてはいけないと判断した僕は気付けば扉を開け、その男を外に蹴り出していた。
蹴るというか、足で押し出す形だ。
男は倒れながら外へ飛び出た。
すぐに鍵を閉め、奥さんに言った。
「寝室も、リビングも、キッチンも窓全部鍵閉めて!!」
報復行為があるかもしれないと思ったためだ。
後で奥さんから聞いた話だが、この時の僕の顔は真っ白だったらしい。
そりゃそうだ。
強盗かと思ったし、必死で外に蹴り出した時もずっと血の気が引いていることが自分でもわかっていたから。
自分の手が冷たかった。
男の一人暮らしでオートロックなんて気にしたこともなかった。
それの重要性に足で触れることになった夜。
覗き穴からまだその男がいないか、ベランダに忍び込んでいないか、色々チェックしているうちに血が巡っていくのがわかった。
本当に音を聞いてたまたま玄関に向かったのが奥さんじゃなく僕で良かったと冷静になって思う。
今思うとその男は酔っ払っていたのかもしれない。
「お前誰やねん」にもきちんと返答できていなかったし、蹴られても抵抗もなかった。
もしマンションの部屋を間違えただけなら申し訳ないことをしたなとも思ってきた。
今でもあの時の対応が正しかったのかわからないが、免疫は出来たし今はボクシングも始めたのでもう少し冷静に対応できる自分でいたいと思うが。
でもやっぱりまたビビって血の気が引くんだろうなと思う。
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