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    [#131] 何とも言えない 『インバウンドの影響で』

    KITSU

    2023/07/03 19:00

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    『インバウンドの影響で』

     

    いつもはたくさんの機材を車に積んで高速道路を走った先にステージがある。

    大阪でのライブはやはり多いのでその道のりも慣れたものだ。

    しかし今回は新幹線で新大阪に到着する。

    ギターを持たずに大阪に来ることもそんなにないので居心地が悪い気もした。

    明日から僕は初めて地元大阪でPOP UP STOREを開催するのだ。

    大量の段ボールは事前に送ってある。

    そうとなれば二泊くらいならKITSUのバッグは大活躍だ。(宣伝)

     

    新大阪に到着するとエスカレーターで人が立つ位置を見てスイッチが切り替わる。

    東京に住んで長いもののお前は大阪の心を忘れたのか?とエスカレーターに言われている気がする。

    みどりの窓口は長蛇の列。

    タクシーは長蛇の列。

    551は長蛇の列。

    それらを見ていて思った。

    外国人が多いな。

     

    新大阪からは御堂筋線で梅田に向かう。

    Suicaを持った僕のそれはいつもオートチャージで設定されている。

    改札を通るたびに足りない分は勝手にチャージされる。

    しかし東京限定なのか、関東限定なのか。

    大阪の改札ではそれはうまくいかず「ピコン!」という警告音と改札の小さい扉が閉まった。

    「これは失敬」

    そう思いながら駅員さん部屋へ行く。

    大体勝手はわかっている。

    そこにある端末にSuicaの入った財布を置けばいいんだろう。

    「すんませんー」

    なんて言いながらその端末に財布をかざした時。

    「Stay」

    おじいさんの駅員さんにそう言われた。

    流石にStayの意味はわかったので言われた通りstayした。

    チャージ完了の音が鳴ると駅員さんは僕に言う。

    「OK」

     

    初めましての方によく言われることがある。

    「ハーフですか?」

    「いえ、羽曳野産の田中です」

    てな感じの会話がよくある。

    でもこれも別に嫌な気もしないし、だからと言って嬉しいわけでもない。

    そういう系統なんだなという認識である。

     

    あ。

    と思いながらも「ありがとうございます」と返した。

    リュックを背負った金髪のロン毛。

    鼻は人よりも高く顔も濃い。

    外国人に間違えられたのだ。

    だからと言ってそれに対して何も思わないが、駅員さんに恥をかかせてしまったかな?

    と不安になった。

    「ありがとうございます」ではなく、「Thank you」と返してあげれば良かった。

    自分の対応力の無さと気遣いの無さとユーモアの無さに少しヘコんだ。

     

    会場から近いホテルに二泊。

    初めての大阪でのPOP UPは大盛況で幕を閉じた。

    ライブのツアーでのホテルとは一味違うチェックアウトの時間だ。

    部屋にギターはない。

    申し訳ない程度に部屋を整理して、忘れ物がないかチェックする。

    この辺は慣れたもんだ。

    扉の横に挿してあったカードキーを抜くと部屋の照明もゆっくり消えた。

    「設営日入れて三日間お世話になりました」

    そう声にならない音量で部屋に別れを告げた。

    チャックアウトも慣れたものだが、いつものツアー中のそれとは違った。

     

    カードキーを受付に返す。

    ホテルマンが何やらパソコンに打ち込んでいる。

    その様子を僕は眺めていた。

    「Check out finish!」

    ホテルマンは笑顔でカタコトでこんな言葉を僕に言った。

    僕は笑顔でカタコトで返した。

    「Thank you!」

     

    初めての大阪でのPOP UPに来てくれた人に改めて感謝を。

     

     

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