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[#128] 何とも言えない 『メンバーの体調』
『メンバーの体調』
今まで考えたことがなかった。
僕らバンドマンは身体が資本である。
朝まで飲んでも、ラーメンばかり食べても、タバコ吸っても大丈夫。
なぜなら俺らはロックだから。
こんな理屈は昔話に聞こえる。
あの頃の無茶はちゃんと身体に蓄積されている。
こんな話をすると誰か体調悪いの?
と思うかもしれないが今のところ大丈夫。
でもいつかメンバー同士で「あの薬が良い」とか「あの保険に入った」みたいな会話が行われる時が来るのかなと思うとちょっと面白くてコラムで書いてみたくなったのだ。
東京までの高速道路。
ボロい車のヘッドライトはその他の車の光量に負けている気がする。
一層安全運転で向かう。
まだ東京でのライブがそんな頻繁になかったので行きの車内はいろめき立っていた。
一人を除いて。
シンタローの様子がおかしい。
「風邪かもしれんけど、車内が乾燥してるから喉が痛いだけやと思う」
正常な判断なのか、自分に言い聞かせているのか。
その割には入念にマスクをしているシンタロー。
そんな人に運転させるわけにもいかず大ちゃんがハンドルを握る。
朝方下北沢に着く頃、彼の体調は悪化していた。
十年以上バンドをやっていると僕らの体調不良でお客さんに迷惑をかけたこともある。
僕の交通事故はそれの最たるものだ。
メンバー揃ってコロナになってしまったのもそうだ。
これからも何かしらあるかもしれない。
ただわかっていて欲しいんですが、バンドマンにとってライブの中止や延期は一番辛いことだ。
バンドマンを代表してしまったが、間違いなく僕の中では一番辛いことだ。
ステージでミスするどころか、ステージに立つことすらできないなんて。
ライブという活動の中で一番好きな仕事を自分のせいで潰しているのだから。
まだデビューも決まっていない。
バイトを折り合いつけて挑む東京でのライブ。
シンタローは朝一で慣れない東京の病院へ向かう。
タミフルという薬を貰って帰ってきたということはインフルエンザなのだ。
それでもライブは決行した。
その判断は今思えば間違えているのだけど、あの頃は東京まで来てライブというチャンスを逃すまいとしか考えられないほど自己中心で生きていた。
シンタローもライブの時間だけは何とかしたいということだったが、後で聞くとタミフルのせいかライブ中の記憶がないらしい。
本番の時間以外は彼はずっと車の中で過ごした。
あれから二十年近く経ち、環境も生活リズムも変わった。
風邪とかではない年齢から来る身体の不調もあるだろう。
身体だけではない。
精神も健やかでありたい。
メンタルの病気だって気をつけたい。
三人が三人なりに健康であればいいなと思うだけ。
キンタさんは筋トレをしてるし、シンタローさんは毎朝バナナを食べてるらしい。
長くやれば偉いわけじゃないけど、偉くなくてもいいから長くバンドをやりたいもんだ。
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