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    [#113] 何とも言えない 『アーユーフィリピンボーイ?inサウナ』

    KITSU

    2023/02/27 19:00

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    『アーユーフィリピンボーイ?inサウナ』

     

    「アーユーフィリピンボーイ?」

    よく行く銭湯で言われた言葉だ。

    椅子に座り、いわゆる整っている状況でそう語りかけられた。

    語りかけた方も語りかけられた方も全裸のおじさんだ。

    お相手はおじさんとおじいさんの間に位置する男性。

    整い中の僕は「あぁ、いや。。えー違いますかね」

    なんてぼーっとした頭で精一杯答えた。

     

    「似てたもんで、ごめんね兄ちゃん」

    またそのおじさんに話しかけられたのは水風呂の中。

    僕は別に何も悪い気はしていない。

    そこからよくその銭湯でおじさんとは出くわす。

    裸でしか会ったことがないので街で会っても気付かない自信がある。

    逆に裸だとすぐに知り合いだと気付くことができるだろう。

     

    「大阪のもんは粉もんばっかり食べて美味い美味い言ってんだろ?」

    また別の日の会話。

    何という偏見にまみれた言葉だ。

    でもそのおじさんは嫌味なく僕との会話を楽しくしようとしてくれていることはわかる。

    「何言うてんすか、粉もん美味いでしょうよ」

    このくらい言い返せる関係性になった。

     

    「ホスト?」

    また別の日の会話。

    いきなりフィリピン人かどうか話しかけてくるしおじさんは、また当てずっぽうで質問してくる。

    フィリピンの件も、粉もんの件も、ホストの件も加味すると正解率は低い。

    「ホストやれる歳でもないっすよ」

    僕は三十七歳であることを伝えるとおじさんが言った。

    「はははは!そんなおじさんではダメだな!」

    うるせーお前の方が圧倒的におじさんやろがと思ったが、おじさんの豪快な笑い声は好きだ。

     

    「おぉ久しぶり、バンドはどう?」

    また別の日の会話。

    サウナをそろそろ出ようかと思い汗だくの僕に今入ってきたおじさんが言った。

    もう僕のことをバンドマンだと理解している。

    そこから会話が続くもんだから僕は予定より長くサウナに入ることになり、その日の整い具合はヤバかった。

    整っているところにまたおじさんがやってくる。

     

    「マイケルジャクソンの後ろでギター弾くか?」

    椅子に座っている僕に話しかける。

    あんたのせいで休憩が長くなっている上、あんたのおかげで整い具合が絶好調なんだから話しかけてくるなよと思いながらも無視できないのは僕の人の良さか、おじさんの人の良さか。

    「何すかそれ?死にましたやん」

    僕がそう言い終わる前に食い気味でおじさんは言う。

    「あれ実は生きてるよ」

    あ、今日はこのおっさんを無視して整いを続けよう。

    そう思った。

     

    「あれ?今日は早く帰るんすね」

    珍しく僕から話しかけた。

    いつもならサウナで会う時間なのに、僕が来店した時にはもう脱衣所で帰る準備をしていた。

    「ちょっとマブダチのcharのライブに行くんだよ」

    またこのおっさん話を盛っている。

    マブダチじゃなく普通にチケット買ってお客さんとして行くんだろうなと僕は想像しながら服を脱いでいく。

    まずマブダチという単語がダサい。

    服を着ていくおじさんと服を脱いでいく僕。

     

    「ほらこれ見て」

    おじさんが真っ裸の僕に携帯の写真を見せる。

    そこにはcharさんと肩を組むおじさん、charさんと乾杯をするおじさん、charさんと談笑するおじさん、などなど。

    おじさんほんまにcharさんとマブダチなんや!!!!

    心は驚き、顔は平静を、体は裸。

    見た目は子供、頭脳は大人、名探偵コナン!みたいだなと少し冷静に考えたりもした。

     

    「じゃあまた!」

    おじさんとサヨナラして一人サウナで汗を流す。

    スマホも触れず、テレビも音楽もないその空間は現代人には必要なものなんじゃないかとも思う。

    僕はよくこの時間に次のライブのMCや今作っている歌詞やこれからのバンドの動き方などを考える。

    いい案が思いついたら脱衣所で裸でスマホにメモる。

    脱衣所に行くまで忘れないように脳内でアイデアを復唱する。

    その日も色々考えていたが、おじさんのcharさんとの写真の残像がチラつく。

    「は!!」

     

    「待てよ、charさんが本当の話だったんだからマイケルジャクソンが生きている話も本当かもしれない」

    と一瞬思ったが、んなわけないかとまた仕事のことを考える。

    おかげでさっき思いついた良い歌詞を忘れた。

     

     

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