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    [#248] 何とも言えない 『えらいすんまへんなー!』

    KITSU

    2025/10/13 19:00

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    『えらいすんまへんなー!』

     

    大阪のタクシーにいつも安心してしまう。

    関西弁に安心しているのか、見慣れた景色に安心しているのか。

    だからこちらも饒舌になってしまう。

    いらんことを言ってしまうのだ。

     

    ギターを背負って新幹線に乗る。

    大きな荷物で肩身は狭い。

    なので最近は特大荷物スペース付きの座席を予約する。

    富士山が見える窓側はいつも満席だ。

    朝が早かったため自分のA席に座るとすぐに眠りにつく。

    名古屋あたりで目を覚ますとC席にサポートドラムの吉田さんが座っていた。

    口開けて寝てるのを見られたに違いない。

     

    「新大阪までお願いします」

    標準語になっていないか細心の注意を払う。

    大阪でのフェスはいい感じに終了し、今日は各自東京に帰ることになっていた。

    僕は一人でタクシーを停め後ろの荷台にギターを積んだ。

    「なんかコンサートやってたんですかー?」

    「はい、そうなんですよー」

    「じゃあお兄さん芸能人なんかいな!」

    「全然ちゃいますよー」

    こんな会話は心地良い。

    本当は少しチェックしたい音源がありヘッドホンをしたい気持ちだったのだが諦めてヘッドホンをそっと首にかけた。

    これはたぶん新大阪に着くまで会話のキャッチボールは続く。

    嫌ではない。

     

    「この次の信号で左見たら大阪城綺麗に見えるで~」

    バスガイドさんのように運転手さんが教えてくれる。

    「新幹線乗ってどっかに出張ですかー?」

    そりゃ僕の関西弁を聞いたら大阪に住んでいると思うに違いない。

    「いや東京に帰るんですよー。今は向こうに住んでて」

    「あーそうなんやねー!もう東京長いんですかー?」

    「もう十五年くらいになりますかねー」

    「あらー!ほんなら大阪めちゃ変わったでしょー?」

    「そうですねー。でも実家にはよく帰ってるんで」

    会話が止まらない。

    ヘッドホンは諦めたがSNSの更新くらいはタクシー内でやりたかった。

    でもそれも諦めた。

    「ほな、お兄さんは大阪のどこ出身なん?」

    「僕の出身はこんな大阪城とか新大阪みたいな都会じゃなくて、ど田舎でなんにもない羽曳野市ってことです」

    「えらいすんまへんなー!私が今住んでるのは羽曳野市ですわ!!!」」

    「え!おっちゃん羽曳野の人!?」

    「えらいすんまへんなー!ど田舎でなんにもない羽曳野市に家買いましてん!羽曳野の安いですんまへんなー!!」

    安い家とまでは言っていない。

    羽曳野にも高い家はある。

    「私とにかく日当たりの良い家が欲しくてねー。そこで考えましてん。羽曳野は古墳が多いでっしゃろ?南側に古墳がある家なら古墳がなくなってビルが建つことはないから日当たりが確保されるってことですねん」

    「おっちゃん名探偵やん!!」

    えらいすんまへんなー!と言わせてしまった罪滅ぼしで名推理だと絶賛しておいた。

    ただおっちゃんに言うときたいけど僕は羽曳野が大好きでっせ。

     

     

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