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[#247] 何とも言えない 『緑のバッタ~交通事故のちNEW WORLD〜』
『緑のバッタ~交通事故のちNEW WORLD〜』
KawasakiのKLXというオフロードバイクは黄緑色でいわゆるKawasakiカラーそのものだった。
神奈川の海老名まで車体を見に行きローンを組んで買った。
海老名までシンタローがバイクの後ろに乗せてくれて二人で行った。
高速道路をバイクで走るのはなかなか疲れる。
しかも後ろに人を乗せているともっと疲れる。
シンタローに感謝だ。
何年か乗ってローンは払い終えた。
リハーサルの帰り道僕は交通事故に遭う。
メンバーに懺悔だ。
ここで詩をひとつ。
緑色のバッタが言う。(だいたいのバッタは緑色か)
「このまま僕と眠ろう」
左の触角が折れている。
カーテンが揺れる。
風はあっちからこっちだ。
わざとらしく綺麗な部屋。
エロいサイトで見た情事はない。
無菌すぎるこの建物は居心地が悪い。
あーそうか。
ここの唯一の菌は僕か。
彼女はいつも僕にハンドクリームを塗ってくれる。
決まった時間に来やしない。
待つ。
待つ。
緑色のバッタが言う。
やはり左の触角が折れている。
よく見ると血が流れ、腹からは汁が出ている。
「おやすみ。このまま静かに帰ろう。そして眠ろう」
眠るにはまだ早い時間だよ。
「君は充分よくやったよ。今までご苦労様」
バッタはこう言うと僕をベッドに押さえつけた。
僕は無言でバッタを見る。
「君も気付いているはずさ。わかっているはずさ。この先は獣道、いばらの道、もしくは行き止まり。コレを言い訳に僕と逃げればいい。誰も文句は言わないさ。同情だって手土産になる。さぁ僕と眠ろう」
何の話だ?(わかっているのかも)
バッタ。
お前は誰だ?
カーテンが揺れる。
風はこっちからあっちだ。
窓からは天気がよければ富士山だって見える。
日本一といってもあの程度か。
口ではこう言っても天気がいい日は心が踊っている。
緑のバッタは夜の目黒通りで死んだ。
詩は自由だ。
しかし歌詞はそうはいかない。
メロディに縛られながら入院中歌詞を書いた。
右手はボロボロで。
ちなみに僕はメロディという縛りが大好きだ。
不自由の中の自由を探すのが好きだ。
長い入院生活とリハビリを経て水面下でアルバムを作った。
僕の右手がまだ動かないのであのアルバムのギターフレーズは比較的簡単なものが多い。(ギターをコピーするならこのアルバムがおすすめ)
そんなアルバムの再現ツアーが始まった。
懐かしむだけではない。
あのアルバムの素晴らしさを再認識するツアー。
今の僕らならもっと表現できるんじゃないかと挑戦するツアー。
過去と今をかき混ぜたら未来が出来上がった。
カフェオレはもうコーヒーと牛乳に戻れない。
僕らもあの日に戻れない。
新しい世界とは完全に知らない世界ではなく過去の自分と今の自分が積み上げた見たこともない世界なのだ。
今の僕らにとっての新しい世界とは20周年という、もちろん初めての領域。
この瞬間に、このツアーをやる。
それは意味しかない。
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