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[#236] 何とも言えない 『野良猫と家猫と娘』
『野良猫と家猫と娘』
野良猫が二匹いる。
こいつらには近所の誰かがご飯とかあげているのかもしれないし、あげていないのかもしれない。
いつも決まって向かいの家の軒先で眠っている。
これだけ聞くとほのぼのとした風景に聞こえるかもしれないがこの猛暑だ。
「え?寝てる、、だけ、、、よね、、、、?」
みたいに心配してしまうのだが、きちんと腹が上下に動いて呼吸している。
野良猫に餌付けしてはいけないがあまりに心配なので我が家にある小さいタッパーに水を入れて玄関先に置いてやる。
飲んでいるのか、干からびているのか。
時間が経てば水はなくなっている。
家に猫が二匹いる。
こいつらはもう外で、ましてやこんな猛暑で生きれない。
エアコンの効いた部屋で毎日ご飯が出てきてフカフカのクッションがある。
「え?猫ってこんなデカくなるの?」
みたいなデカさのお兄ちゃん猫。
9kgだ。
サイズ感は中型犬なのだ。
一応水を入れた器が三つある。
色んな箇所に置いてあるのだ。
脱水になってはかわいそうなので。
「にゃー」
僕の目を見て何かを訴えている。
この時の彼の気持ちはもう理解している。
水に氷を入れて欲しいのだ。
氷の二つ入れてやるとペロペロと飲み始める。
なんて贅沢な猫だ。
時間が経てば氷は溶けてなくなっている。
家に赤ちゃんがいる。
こいつは中でも外でもまだまだ一人で生きていけない。
やはり手がかかる。
高速のハイハイを習得し、ソファくらいならよじ登る筋力も備え、彼女は少しの自由を手にした。
「え?キャットタワーに登りそうじゃない?」
みたいな勢いで成長している。
気づいたら彼氏ができたとか言い出しそうな勢いだ。
彼女のあんなにブカブカだった服は今では小さく着れなくなり友達にあげたりしてなくなっていく。
ベビーサークルという檻?柵?を導入したがそれは赤ちゃんが危ない所に行かないようにするためのもの。
しかしそれ以外でも効能があったのだ。
うちの猫がそれを飛び越えるのだ。
リビングや寝室に行く度に9kgの猫が柵をジャンプしてくれるのだ。
これはダイエット効果がありそうな副産物。
いいぞいいぞ。
痩せろ痩せろ。
娘が寝た後も柵の扉を開ければ僕は通りやすいのだが猫のダイエットのために閉めたままにしてある。
問題はその時間に起きる。
娘が眠りについた夜。
親は少しの自由を手にする。
仕事したりダラダラしたり。
そこに激突してくる生物がいる。
お兄ちゃん猫だ。
彼は一応娘に気を遣ってか、この時間に存分に甘えてくる。
デカい声で。
もはや怒っている。
撫でまくり彼の毛が宙を舞い地面に落ちる。
ハイハイをする生物はもう寝室なので好きなだけ毛を撒き散らしてくれ。
この時間まで甘えるのを我慢していたのかと思うと愛おしくなる。
しかし甘えるを通り越して尋常じゃなく怒っている。
「お前この時間まで俺を放置しやがって!!」と。
別に放置はしていないけど、どうしても娘が優先されてしまうこの頃。
次の日仕事に出かける僕に目線だけ送る野良猫。
家の中では娘が泣き喚き、猫が柵を飛びまくる。
なんだ、外の野良猫が一番たくましく平和ではないか。
「お前はすげーな」
話しかけても無視なのだが、僕はギターを背負いリハーサルへ向かう。
汗だくで。
この猛暑が早く終わればいいと自分のためにも野良猫のためにも思う。
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