ハートをおくったユーザー
ハートをおくったユーザーはいません

[#276] 何とも言えない『帯』
『帯』
「ヒロキさん、誰に帯書いてもらいたいか決めてくださいね。当たってみますので」
小説の書籍化に当たって編集の方が僕に言う。
「あの〇〇さん絶賛!とか○万部突破!みたいなやつですよね?」
「まーそれです。というか今回はその方からの感想や想いを記載できたらなと思っています」
「誰でも良いんですか?」
「はい。許可を貰えるかは別ですけど」
「じゃあ稲葉さん(B'zの)」
「B’zの!?」
「はい、稲葉さん(B’zの)」
「まー無理ですね」
「誰でもいいって言いましたやん」
何人か候補を考えてみた。
有名な人なら誰でも良いわけではないが、無名よりは有名な人がいいんでしょう。
こういうのは。
いきなり僕の大阪の幼馴染にコメントお願いしても「誰やねん」となるわけやから。
でも有名やからって少し面識あるくらいの人にお願いするのも違う。
言葉に愛が乗っからない。
そんなの関係ないくらい僕の作品が素晴らしければ面識あるなし関係なく愛のある言葉をもらえるかもしれないが、今回はそういう話ではない。
こういう時の僕の悪い癖が出そうだったので一番最初に頭に浮かんだ人をまずメモった。
こういう時僕はど真ん中の真っ直ぐを避けてしまうのだ。
骨の芯からのあまのじゃくな性格なのだ。
なんとしてでもひねりたくなる。
本当はわかっているくせに・
“この本の帯ならあの人しかいないやろ”
「本の帯書いてくれへん?」
「全然ええけどもっと文章に精通してて、ネームバリューある人の方がいいんちゃうん?せめて山村くらいの」
「せめてってw」
「変なこと書いても文句言わんといてや?」
「いや、変なこと書いたら文句は言うよ」
「でも無難なのもおもんないやろ?」
「うん、無難なのはいらん。元気らしい文ならなんでも嬉しい」
こいつもあまのじゃくな性格なのだ。
あまかわだけに。
だから親友なのだ。
それはあるカフェで作業していた昼下がり。
「尼川さんからのコメントいただきました!ヒロキさんにも共有しておきます」
編集の方からメールが来た。
正直メールボックスを開くのが怖かった。
彼にとってこの本が面白いと思えるものなのかという不安と、あいつなら変な帯コメント書いてくる可能性があるから。
メールボックスをクリック。
油断すると膝から崩れ落ちそうだ。
油断すると涙腺が決壊しそうだ。
本の中で描いた物語が走馬灯になり、すべて彼の顔で翻訳される気分だ。
この本のクライマックスがここにもある。
僕が何百ページと書いた小説を数行のコメントで捉えてくれた上、本を楽しんでくれたみたいだ。
安堵と感動。
そして僕のことを羨ましいと書いてあった。
アホかいな。
羨ましいのはお前や。
僕の本は彼の言葉の帯に抱きしめられながら書店に並ぶ。
こんな40過ぎた男たちの戯れを目視しに書店に通ってしまであろう自分を想像してニヤついてしまう。
いや、このニヤつきすらキモいのだが生理現象なんだから仕方ない。
皆さんも是非小説読んでほしい。
この世界に片足突っ込んでほしい。
こちらのコラムが気に入った方はハートでのご支援をお願いします。
支援金の一部は、吃音症で苦しむ方々のNPO法人へ寄付されます。
