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[#265] 何とも言えない 『THE BAWDIES』
『THE BAWDIES』
デビュー当時、大きなイベントに出ることが多かった。
憧れたバンド、テレビで見ていたバンド、怖そうなバンドなど。
デビュー当時なので、もれなくそれのバンドたちは先輩にあたるわけです。
会場のほとんどが僕らのことなんて知らない状況の中。
僕らは若さだけを振りかざし音を鳴らした。
普通ことをしているだけではダメだと思っていた僕は何かしらの爪痕を残そうと必死だったことだけは覚えている。
毎回打ち上げみたいな乾杯がある。
打ち上げが苦手だった。
一刻も早く帰りたい。
コミュ力もない僕らは隅っこでメンバーだけで固まっていた。
新代田FEVERというライブハウスの楽屋はめちゃくちゃ広い。
しかし楽屋の部屋の数は一つ。
嫌でも同じ空間に居なければならない。
でも今ではある程度のコミュ力を身に付けたつもりだ。
というかもう良い大人なのだから。
THE BAWDIESというバンドをイベントにお誘いした。
結果的に本当に最高のライブをしてくれて、最高のイベントになった。
心配していたけど、楽屋でも楽しく話せた。
でも本当に楽しく話せたのはライブ後の軽い打ち上げだった。
やはりバンドマンはお互いのライブを見た後の方が共通言語も増えて饒舌になる気がする。
それぞれを讃え合う打ち上げという時間はご褒美だ。
デビュー当時の僕らは打ち上げが早く終わらないかと願っていた。
とか言いながら、本当は憧れたバンドと話す勇気もない自分と対峙するのが嫌だったのかもしれない。
そんな時に優しい先輩は気を使って話しかけてきてくれたりする。
早く帰りたいという顔をしてしまっていたため大感激しているのに表情には出せない。
しかもライブを褒めてもらえた。
でもその後すぐに言われた言葉が今でも僕の心に残っている。
「でもギターの子、もう少しボーカルを立たせた方がいいね。お客さんがボーカルの子を見たい時に目が散るっていうかさ」
一気に酔いが覚めた。
THE BAWDIESとFEVERの楽屋で飲み始めた。
でも楽屋の清掃があるからと追い出され、ライブハウスのフロアで飲み直した。
せっかくならと僕は一番面識のなかったギターのJIMくんの横に座った。
ライブ前はそこまで深い話は出来なかったが、酔いも回り深いとまでは言えなくとも心を通わせる会話が出来たと思う。
「そろそろFEVER閉店ですー!!」
なんてスタッフに言われるまで飲んでしまった。
でも飲み足りない。
いや、話し足りない。
それでも仕方ないので皆んなゆっくりと席を立ち、ゆっくりと上着を着る。
その間も話す者は話す。
マフラーまで巻いたJIMさんが僕に言い残した。
「通じるものがある者同士やと思うから、またゆっくり飲もうね。お互いボーカルを喰ってやろう!って演奏してるギタリストだと思うし」
一気に酔いが覚めた。
20年前の僕よ、見ているか。
ボーカルを立てろと言った先輩の言葉も、JIM君の言葉も今の僕は完全に理解できる。
でもずっと喉に刺さったままだった魚の骨のような先輩の言葉が流された。
何年もの時を経てJIMくんの水のような言葉のおかげで。
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